ファイナンス 2023年7月号 No.692
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図3 花園町通り 図4 大街道とアエル松山 (出所)松山市「花園町通りリニューアルパンフレット」表紙(出所)2018年12月13日に筆者撮影プロフィール大和総研主任研究員 鈴木 文彦仙台市出身、1993年七十七銀行入行。東北財務局上席専門調査員(2004-06年)出向等を経て2008年から大和総研。近著に「公民連携パークマネジメント:人を集め都市の価値を高める仕組み」(学芸出版社)ファイナンス 2023 Jul. 59ことをも意味する。松山は街なか再生がうまくいっているように思われる。その背後にどのような取り組みがあったのか。人流データを捉えた戦略的まちづくり松山のケースは、都市構造の変化に伴う新たな人の流れをデータで捉え、公共インフラの再整備に反映したことが特長だ。その代表例が花園町通りの減幅・街路化である。花園町通りは、松山市駅前から城山公園に突き当たる戦災復興のシンボル道路である。幅員40mで、中央に路面電車の複線があり、その両脇に車道が側道含む片側3車線、往復6車線あった。将来の車社会を見越して広げた花園町通りだったが、90年代半ば以降の20年で自動車通行量が半減した。松山環状線など迂回路の整備により都心に流入する自動車が減ったこと、中心商業が朝生田地区をはじめとする郊外拠点へ移転したことが主な要因だ。城山公園にあった野球場、競輪場その他のスポーツ施設や国立がんセもう1つの目を見張る取り組みは市内の商店街を中心としたまちづくり会社「まちづくり松山」の人流分析だ。来街者捕捉カメラでデータを分析している。年齢、性別、曜日・時間帯の来街者データから人の流れを分析し様々な施策に役立てている。例えば、銀天街や大街道は30代後半の男女が多い。また、日曜はファミリー客が多く、夕方には早々と帰宅することがわかった。そこで、街なかバルのイベントを打つにあたって金土日から1日前倒しし木金土の開催に変更するなどの工夫をした。目下、公・民・学の連携組織「松山アーバンデザインセンター」の主導でスマートシティプロジェクトが進んでいる。決済、交通データ、スマホ位置情報や定点カメラから得られるデータを加工してサイバー空間上に人の流れを再現。公共交通の最適運行や、まちづくり計画とその効果測定に役立たせる「データ駆動型都市プランニング」手法の構築が期待されている。ンターの郊外移転も影響した。松山市は「歩いて暮らせるまち松山」をコンセプトに掲げている。その一環として城山公園から松山市駅へ、銀天街及び大街道を抜け、ロープウェイ通りを経て道後温泉に至る徒歩導線を想定し、その導線上の1つである花園町通りの街路化を進めた。平成23年(2011)から検討を進め、交通量のシミュレーションや社会実験を重ねつつ、平成29年(2017)に完成した。路面電車の外側に車線を1本ずつ残し、潰した車線を自転車道と歩道にした。これで歩道幅は5mから最大10mに広がった。整備に合わせて電柱を地中化し、片側のアーケードを撤去し、外壁や看板、テントなどのデザインを「景観まちづくりデザインガイドライン」に沿って統一した。広くなった歩道にはウッドデッキや芝生が敷かれ、マルシェやオープンカフェが開催されるようになった。 /01234 !"#$%&'()*&+,-.ÿÿ

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