ファイナンス 2023年7月号 No.692
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(出所) 日本中央競馬会、全国モーターボート競争施行者協議会、JKA、地方競馬全国協会、久里浜医療センター「令和2年度依存症に関する調査研究事業「ギャンブル障害およびギャンブル関連問題の実態調査」報告書」、第3回特定複合観光施設区域整備推進会議「カジノ規制制度の基本的な考え方」、特定複合観光施設区域整備法施行令、トーマツ「特定複合観光施設区域に関する海外事例調査」IR開業による経済波及効果定複合観光施設区域の整備に関する計画(案)経済波及効果の算定方法及び算定根拠について(解説資料)」IRにおけるカジノ規制・依存防止対策についてコラム 経済トレンド 109(兆円)96302010201120122013201420152016201720182019202020212022(図表8)過去1年におけるギャンブル等依存が疑われる者の割合男女合計7,809人97.9%175.6人2.2%(1.9~2.5%)7,985人(注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。※ 95%信頼区間…同じ調査を100回実施した場合、95回はその区間内に真の値が含まれるこ式スクリーニングテスト。とを意味する。※開業3年目期4,000(出所) 大阪府・大阪市・大阪IR「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画」、首相官邸「諸外国におけるIRについて」、日本総合研究所「大阪・夢洲地区特・日本国内では娯楽サービスとして既に公営競技が運営されている。公営競技は、かつてはレジャーの多様化やファン層の固定化等で売上に伸び悩みがみられた。しかし、近年は新型コロナウイルスの影響もありインターネットでの購入の定着等に起因し、売上が増加傾向にある(図表7)。・過去1年におけるギャンブル等依存が疑われる者の割合は、2020年時点において男性で3.7%、女性で0.7%と試算されている。ギャンブル等依存が疑われる者はそうでない者より有意に抑うつ・不安が強いことが示されるなど、ギャンブル依存については我が国における社会的な課題のひとつとなっている(図表8)。・日本のIRは、IR整備法施行令等において、免許制の導入による事業者の参入規制、カジノ施設の面積に関する規制、日本人を対象とした入場回数制限や入場料の設定など、諸外国で導入されているカジノ規制・依存防止対策を踏まえた、重層的・多段階的な対策がなされている(図表9)。・大阪府市と長崎県がIR区域整備計画の認定申請を既に行っている。大阪府市については審査委員会から「認定し得る計画」と評価を受け認定されているが、長崎県については審査継続中の状況である。・認定された大阪IRは2029年に夢洲地区で開業予定であり、IR区域への来訪者数(開業3年目期)は、国内旅行者数で1,358万人、訪日外国人旅行者数で629万人の合計1,987万人を計画している。また、大阪IRの立地に伴い、近畿圏への来訪者数は、国内旅行者については9,815万人、訪日外国人旅行者については2,520万人を見込んでいる。さらに、近畿圏への経済波及効果は年間約1.1兆円、雇用創出効果を約9.3万人と想定している(図表10)。・IRに係る経済効果は建設段階に発生する土地造成・施設建設への投資等だけでなく、毎年継続的に発生する雇用創出・消費拡大・交通需要等の運営によるものもある(図表11、12)。大阪IRは運営による経済波及効果として、宿泊業・飲食店を含む対個人サービス、物品賃貸サービス・広告・労働者派遣サービスを含む対事業所サービス、金融・保険・不動産で毎年1,000億円以上の生産が誘発されると試算している(図表13)。また、粗付加価値誘発額は年間6,538億円と見込まれており、GDPを0.12%程度の押し上げる計算になる。・コロナ禍を経てオンラインカジノの台頭やオンライン会議の浸透等、IRを取り巻く環境は変容しているが、カジノ依存防止対策が機能し、付加価値誘発によるGDPの押し上げが実現すれば、IR誘致は日本経済活性化に資するものになるのではないだろうか。(図表7)公営競技の売上推移競輪合計(図表10)大阪IRの経済波及効果(95%信頼区間)合計人数※調査時点…2020年10月~12月※ SOGS…アメリカのサウスオークス財団が開発した病的ギャンブラーを検出するための自記中央競馬地方競馬SOGS 5点未満人数割合人数割合 (依存症が疑われる者)SOGS 5点以上 全体指標経済波及効果経済波及効果(建設)1兆5,892億円経済波及効果(運営)※1兆1,443億円IR区域の後背圏(近畿圏)粗付加価値誘発額※6,538億円雇用誘発効果(建設)116,416人雇用誘発効果(運営)※区域内雇用者数※IR区域への来訪者数※IR区域来訪者によるIR区域滞在中の支出金額※送客施設の機能による 送客者数※畿圏)への来訪者数※12,335万人内、 日本人:9,815万人 IR区域への後背圏(近外国人:2,520万人92,515人IR区域の後背圏(近畿圏)約1.5万人1,987万人内、 日本人:1,358万人 外国人:629万人6,637億円内、 日本人:3,014億円 外国人:3,623億円約4.3万人競艇オートレース男性3,842人96.3%149.3人3.7%(3.2~4.4%)3,991人女性3,967人99.3%26.2人0.7%(0.4~1.0%)3994人備考建設による経済効果(建設段階でのみ発生)土地造成・施設建設等に係る投資建設に必要な資材の生産・運搬等、様々な分野で新たに経済効果が発生運営による経済効果(毎年継続的に発生)直接効果雇用創出・消費拡大等の効果が継続的に発生間接効果来訪者の交通需要等、様々な分野で新たに経済効果が発生・事業者・従業員(ゲーミング関与者)・ ジャンケット業者または対象免許制による参入規制有効期間・3年間施設面積・ ゲーミング区域の総面積15,000m2以内カジノ施設・機器の規制・ スロットマシーン等の数機器2,500台以内・ 規制当局が定める技術基・21歳未満・本人・家族による制限・第三者・法令による制限入場回数・本人の申請による制限入場制限依存防止対策・家族の申請による制限なし・ シンガポール国民又は外・24時間 100S$(約1万円)・1年間 2,000S$(約20万円)入場料シンガポール米国ネバダ州・事業者(株主、経営陣)・従業員(ゲーミング関与者)・機器製造業者・土地所有者・無期限その代表者なし・規制当局による承認準等への合致・21歳未満国人永住者から徴収なし建設対事業所サービス金融・保険・不動産商業金属製品製材・木製品・家具その他0(億円)対個人サービス対事業所サービス金融・保険・不動産商業情報通信飲食料品その他0(億円/年)日本・事業者(主要株主、役員)・従業員・ゲーム機器メーカー・施設土地権利者・3年間・各IR区域に1施設まで・IR全体の床面積のうち、3%・ 電磁的カジノ関連機器: 型式検定、技術規格への合致・ 非電磁的カジノ関連機器: 技術基準への合致・20歳未満・入場料未納付者・入場回数制限超過者・ 日本人の入場者は、連続する7日間で3回、連続する28日間で10回まで・ 日本人の入場者は、入場料6,000円(24時間単位)10,000(図表13)大阪IRの経済波及(運営)業種別8,0004,0002,0006,0003,0002,0001,000ファイナンス 2023 Jul. 55(図表11)IRに係る経済効果(図表9)各国IRにおけるカジノ規制・依存防止対策(図表12)大阪IRの経済波及(建設)業種別

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