ファイナンス 2023年7月号 No.692
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*1) 1961年から66年まで、駐日大使。*2) 外交官。外務次官、国連大使を歴任。筆者が外務本省に出向していた際、小和田教授は丁寧な指導をされる教育者で、ハーバード大学の学生の評判が*3) 残念ながら、日本からの米国留学生は減少しています。このような事態を憂いて、日系三世のフランシス・フクヤマ元米国通商代表補代理は、100万*4) ボーゲル教授は、所長ご退任後も2020年にお亡くなりになるまで、私邸で「ボーゲル塾」を開催し、本プログラム参加者だけでなく、ボストン滞在日本人の育成を続けられました。ボーゲル教授がお亡くなりになった後、現所長のクリスティーナ・デイビス教授、藤平新樹事務局長に引き継いでいただき、「ボーゲル塾」は継続しています。ボーゲル教授の薫陶を受けた塾生から、「『君たちに日本の将来がかかっているんだ』とボーゲル教授に鼓舞されたことが印象に残っている」と伺いました。*5) トロント大学からの研究者で難民問題等の専門家は、同プログラム在任中、日本のテレビからのインタビューを受け、その模様が報道されました。*6) 研究中に論文を掲載した防衛問題の研究者は、その後、講演のコメンテイターなどの依頼があったそうです。英文掲載の影響の大きさを感じました。*7) 現所長のクリスティーナ・デイビス教授は、新井ゆたか消費者庁長官とパートナーを組みました。新井長官は農水省出身で、その後も農業貿易自由化*8) ハーバード大学で日本語を学ぶ学生の何人かが、この夏、インターンや留学のため来日する予定です。日本で再会するのが楽しみです。*9) 野球観戦も企画され、大谷翔平選手を生で見る機会もありました。*10) アパート契約の場で、1割以上の値上げを言われ、しぶしぶ契約した人もいました。高かったとお聞きしました。ドルの奨学金を寄付しました。等を専門とするデイビス教授が訪日した際お世話になったそうです。前ハーバード大学国際問題研究所 客員研究員 森山 茂樹 40 ファイナンス 2023 Jul.はじめにコロナがある程度落ち着き、3年ぶりにほぼ正常化したハーバード大学国際問題研究所で経験したり、感じたりしたことをご紹介したいと思います。ハーバード大学国際問題研究所についてハーバード大学国際問題研究所には、様々なプログラムがあり、私が属したのは、「日米関係プログラム」です。1980年、同プログラムは、日米の相互依存関係が深化し、直面する問題解決にはお互いの協力が必要であるとの考えから、エドウィン・O・ライシャワー教授(当時)*1と小和田恒客員教授(当時)*2によって設立されました*3。初代所長は、エズラ・ヴォーゲル教授*4。前年の1979年に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が出版されたところでした。今年度の参加者は、官庁、民間企業、ジャーナリスト、内外の大学関係者等でした*5。同プログラムの研究員のメインの課題は、研究テーマについて英文で論文を作成することです*6。専門分野に関する論文作成だけでなく、自身が持つ知識や経験を還元することも期待されていま本文は、個人の体験や伝聞によるものであり、文中の意見に関する部分はすべて筆者個人の見解です。す。具体的には、同プログラムが主催する様々なセミナー等に出席し、質問やコメントをすることが求められ、また、日本について研究している学生とパートナーを組み、お互いに能力を高めることを期待されました*7。毎月開催された日本語を学ぶ学生との昼食会もその一環です*8*9。このような知的交流の他に、コロナも落ち着いたことから、今年から徐々に対面での社交行事も開始されました。ハーバード大学国際室と国際問題研究所等により、歓迎レセプション、年末パーティー等も開催され、世界各国の、様々な分野の研究者と触れ合う機会も多く、研究室に閉じこもるという生活ではありませんでした。ボストン生活についてボストンに限らず、この時期、米国に滞在している日本人にとって共通なのは、円安と物価高でしょう。住宅事情も悪化し、コロナ中は空き家も多かった大学内のアパートは満室でした。家賃水準も、地域にもよりますが、昨年に比べ1割程度上昇したようです*10。私のアパートは大学から少し離れた場所の築100年を越えるアパートでしたが、それでも、月額40万円程度でした。ボストンは、ニューヨーク、サンフランシスコに次いで、家賃の高い地域だそうです。外食費も高く、大学内のカフェテリアのランチでも1500円はハーバード大学研究生活と 社交ダンス部体験記

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