ファイナンス 2023年7月号 No.692
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[5]. 服部孝洋(2023a)「システム上重要な銀行入門−「大きすぎて潰せない(TBTF)」問題について−」『ファイナンス』3月号.[6]. 服部孝洋(2023b)「我が国における金融機関の秩序ある処理(特定第一号措置及び特定第二号措置)―預金保険法126条の二について―」『ファイナンス』5月号.[10]. ジョン・アーマー,ダン・オーレイ,ポール・デイヴィス,ルカ・エンリケス,ジェフリー・ゴードン,コリン・メイヤー,ジェニファー・ペイン(2020)「金融規制の原則」きんざい[4]. 服部孝洋(2022b)「AT1債およびバーゼルIII 適格Tier2債 *25参照[1]. 小立敬(2021)「巨大銀行の破綻処理―ベイルアウトの終わり、ベイルインの始まり」きんざい[2]. 日本銀行・金融庁・預金保険機構(2022)「巨大金融機関の破綻処理制度改革の軌跡─10年目の節目を越えて─」『日銀レビュー』2022-J-7.[3]. 服部孝洋(2022a)「バーゼル規制入門―自己資本比率規制を中心に―」『ファイナンス』10月号.一方、図表16の右側に注目していただきたいのですが、前述のとおり、最大損失額より十分なシニア債等による調達があれば、理屈上、損失吸収した後も一定額のシニア債の元本が存続します。したがって、損失吸収をした後、残った元本を用いて、一部を自己資本に転換することができれば、新しい民間会社(NewCo)には一定の自己資本が生まれることになります(図表16の右下)。このように、事前に、十分なシニア債等により資金調達を行えば、公的資金を注入しなくても、新しい民間会社は、システム上重要な取引を有する子会社を有しつつ、一定の自己資本を維持することが可能になります。なお、このような資本再構築の仕組みは、いわゆるCoCo債(AT1債の一種)を思い出させるかもしれません(AT1債やCoCo債については服部(2022b)を参照してください)。CoCo債とは、資本が薄くなった場合、債券から株式へ転換される債券であり、金融危機以降、規制対応の観点で生まれた債券です。アーマー等(2020)では、「金融機関の資本再構築を民間で行おうとすれば、破綻処理のおそれが生じる時点よりもはるか前に始動しなければならない。また、始動する事態が生じる前に、あらかじめどのような性格のワークアウトをするのかを明らかにしておく必要がある」(p.547)としており、その仕組みとしてCoCo債を位置付けています。同書の説明の手順も、銀行の破綻処理を取り扱う章(16章)において、TLACを説明した後、「不測の事態に備えた資本(contingent capital)」という形でCoCo債を整理しており、資本再構築の流れでCoCo債を取り上げています。(B III T2債)入門―バーゼルIII対応資本性証券(ハイブリッド証券)について―」『ファイナンス』12月号.[7]. 服部孝洋(2023c)「我が国TLAC規制―ベイルアウトからベイルインへ―」『ファイナンス』6月号.[8]. 吉良宣哉・橋本成央(2018)「TLACに係る枠組み整備方針の改訂について」週刊金融財政事情 2018年5月28日号.[9]. 森田宗男(2015)「国際金融規制改革の最近の動向」『証券レビュー』日本証券経済研究所[編]55(1), 1−67.ファイナンス 2023 Jul. 39図表16 米国のSPE戦略の全体イメージ図(出所)預金保険機構資料より作成*25我が国におけるTLAC規制*25) https://www.dic.go.jp/katsudo/page_001649.html4.おわりに本稿では我が国におけるTLAC規制の詳細を説明しました。次回は、本稿で紙面の関係上取り扱えなかったTLACの話題に加え、足利銀行の事例等、一時国有化の仕組みを取り上げることを予定しています。

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