預金保険機構ブリッジHD銀行証券その他ブリッジHDの株式特定第二号措置が発動されてから2年以内に預保が有する株式を受け皿となる金融機関に売却主要子会社受け皿となる金融機関銀行証券その他債務超過内部TLACの元本削減により自己資本の復活主要子会社(銀行)のBS(多大な損失計上時)資産(内部TLAC)主要子会社(銀行)のBS(内部TLACの元本削減後)資産(内部TLAC)ブリッジHDの株式預金負債預金負債自己資本*19) もちろん損失の額がTLACの水準より大きければ、TLAC債も全損するリスクはあります。ファイナンス 2023 Jul. 35図表8 預金保険機構によるブリッジHD傘下の事業等売却図表9 主要子会社(銀行)のBSと内部TLACの関係図表10 主要子会社(銀行)における自己資本の回復のイメージ我が国におけるTLAC規制比率規制で想定される最大損失額の2倍以上に設定されているため、TLACの価値は必ずしも全額毀損されるものではなく、処理後に金融機関が健全な業務運営を行う上で必要な価値が残ることが見込まれます*19。秩序ある処理が行われた場合、TLAC債の投資家がどの程度の損失を負うのか(分配を得るのか)について考える上で、そもそもの事業上の損失規模以外に大きく影響すると考えられる要素は主に二点あります。一点目は損失発生の原因となった主要子会社から持株会社に対してどの程度損失を移転するか、二点目は、前述の通り、破綻処理にあたり、持株会社の有する子会社株式をブリッジHDに対して譲渡するのですが、その際の譲渡対価がどの程度の水準になるかです。損失発生の原因となった主要子会社から持株会社に対してどの程度損失を移転するかこの点について理解するため、秩序ある処理のプロセスに沿って、BS上の動きを考えてみます。まず、前述のとおり、最初に主要子会社(銀行Aとします)において大規模損失が発生し、債務超過に陥っているとします(図表9)。秩序ある処理においては、この銀行Aは処理後も今まで通り営業を継続することになるため、損失を持株会社に移転することで通常の銀行の営業に求められる自己資本比率を回復することになります。具体的には、銀行Aの持株会社に対する債務(内部TLAC)を事前の条件に従って削減し、債務が圧縮されることで自己資本が回復します(図表10)。前述のとおり、自己資本比率の2倍以上のTLACを確保しているため、そのすべてを削減せず、その一部を元本削減していますが、この図表10からわかるとおり、内部TLACの削減が大きいほど、回復する自己資本が大きいことがわかります。持株会社への損失移転は銀行Aが健全な財務状況で営業を継続できるようになるまで行われる必要がありますが、具体的な損失移転額については損失規模や銀行Aの自己資本比率をどの程度まで回復
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