ファイナンス 2023年7月号 No.692
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会議場のしつらえもロジ業務の重要なポイントの1つ。G7新潟では、本会議場中央部に日本庭園をかたどった展示を配置した。会場周辺では会議期間中、警察が厳戒警備にあたった。そして、5月11日から13日にかけては、G7新潟財務大臣・中央銀行総裁会議(以下、G7新潟)を開催した。主要7カ国の財務大臣や中央銀行総裁、国際機関の長が新潟の地に一同に会し、会議の円滑な進行はもちろんのこと、警備や輸送、宿泊や食事、文化イベント等あらゆるロジを主催国が準備する一大プロジェクトであり、財務官室としても一連のG7関連会合の中で最も注力した会議となった。G7新潟の約1週間後には、G7広島サミットを控えており、G7新潟の成果がサミットの議論にも直結する状況において、ロジ面での会議運営の失敗は許されないという気持ちで会議本番に臨んだ。日本のG7議長の下、財務大臣・中央銀行総裁会議を新潟で行うと昨年8月に発表されてから8ヶ月、多くの局面で難しいハンドリングを求められたが、新潟県・市、警察等関係当局、財務省地方支分部局、日本銀行、空港や駅関係者、会場・ホテル関係者、会議運営会社、駐日大使館を含めた参加各国関係者、ボランティアを含めた新潟市民の皆様、等々、本当に多くの方々の協力を得ながら準備を進め、会議期間中もこれら関係者と緊密に連携することで、会議を成功裏に終えることができた。本稿では、ロジ面の立場からG7新潟の準備・運営を振り返りたい。ら代表団の安全を確保することは、議長国の最重要責務の一つであったが、G7財務大臣・中央銀行総裁会議においては、ロシアに対する制裁措置をはじめ機微な議題についても議論が及ぶことから、不測の事態の発生を未然に防ぐため十分な警備体制を構築する必要があった。また、2022年7月の安倍元総理銃撃事件や、会議直前の4月に和歌山で起きた岸田総理への投てき事案といった、国内において要人が狙われる事件も発生していた。こうした足下の情勢を踏まえ、従来から行っていた身分証(IDバッジ)発行による施設入館管理や、会場回りの車両検問に加えて、警察庁や新潟県警、施設管理者等と協議を重ね、各国・国際機関のVIPと一般市民の動線を可能な限り分離するため、JR新潟駅において構内のエスカレーターや改札口の一部を代表団専用にする措置や、一般企業も入居する朱鷺メッセにおいてVIPの移動が発生する時間帯のみ一部フロアの関係者以外の立入を制限するといった措置を講じることとした。こうした措置による一般市民等への影響を最小減にすべく、事前の周知徹底や、当日の迅速・円滑な対応に腐心した。加えて、今回の会場である朱鷺メッセが信濃川に面しており日本海にも近接していたことから、警察に加え海上保安庁とも連携して準備を進めた。準備及び会議期間中は、海上保安庁による潜水検索をはじめとした各種警戒の円滑な実施のため、会議の進行状況やVIPの位置情報をタイムリーに提供し、川に架かる橋上を通行する車両等の安全性確保に努めた。新潟県警及び第九管区海上保安本部の尽力のおかげで、会議期間中、事件や市民生活の大きな混乱は発生することなく、最終日には、G7新潟の共同声明の採択に辿り着くことができた。 12 ファイナンス 2023 Jul. 1 はじめに2023年1月、日本はドイツからG7議長国を引き継いだ。議長国として日本は、国内外でG7関連会合を複数回にわたってホストする必要があるが、これらの会議を開催するにあたり、財務官室は、日程調整や会場設営をはじめとするいわゆるロジ面での会議準備・運営を担ってきた。具体的には、2月のインド・ベンガルールや4月米国・ワシントンDCでのG7財務大臣・中央銀行総裁会議や、大臣・総裁等の業務を最側近で補佐する大臣代理(財務省の場合は財務官)級の会議を複数回開催した。 2 厳戒態勢の中での会議運営新型コロナ感染症の状況が大きく改善したことや十数年ぶりとなるG7以外の招待国を招致したこともあり、G7新潟には、7カ国の財務大臣及び中央銀行総裁、7つの国際機関等の長、6カ国の招待国の財務大臣等が参加し、その随行者も加えると総勢約500名にも及ぶ代表団が主会場となる朱鷺メッセを訪れた。会議期間中、これRoad to Niigata ~ロジ面を中心に

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