ファイナンス 2023年7月号 No.692
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世界経済と経済政策G7は、安定及び成長を志向するマクロ経済政策の組み合わせにコミットしている。財政政策は、引き続き、適切な場合には、脆弱層に対して一時的かつ的を絞った支援を提供し、グリーン及びデジタル・トランスフォーメーションに必要な投資を促進するべきである。全体的な財政スタンスは、中期的な持続可能性を確保し、インフレ圧力の中での金融政策スタンスと整合的であるべきである。中央銀行は、インフレ予想の安定維持を確保し、各国間の負の波及効果の抑制に資するよう、政策スタンスについて明確に意思疎通を行う。供給サイドの改革の重要性及び経済の長期的な成功のための女性及び少数派のグループの極めて重要な役割を強調する。また、「G20/OECDコーポレート・ガバナンス原則」の成功裏の見直しを期待する。脆弱国に対する支援G7は、低・中所得国の債務脆弱性に対処する緊急性を再確認する。低所得国については、予測可能かつ適時に、秩序だった方法で連携した「共通枠組」の実施を改善するためのG20の取組を完全本稿では、今回の会議で採択された共同声明のポイントを、日本議長下の3つの優先課題に沿って紹介したい。さらに、制裁及びその他の経済的措置の履行確保強化の取組の一環として実施調整メカニズム(ECM)を通じた迂回、回避の類型等の関連情報の共有を開始した。G7は、監督・規制当局と引き続き緊密に連携して金融セクターの動向を監視するとともに、金融安定及びグローバルな金融システムの強靱性を維持するために適切な行動をとる用意がある。2008年の世界金融危機後に実施された金融規制改革に支えられ、金融システムが強靱であることを再確認する。FSBによる最近の出来事からの教訓、及び金融の安定強化に向けた将来の作業の優先事項を引き出すために進行中の取組を支持する。に支持する。中所得国については、全ての公的二国間債権者を含む多国間の協調によって債務問題に対処するべきである。この点、フランス、インド、日本の3か国の共同議長の下、スリランカのための債権国会合の立ち上げを歓迎し、中所得国の債務問題への対応における将来の多国間の取組の成功モデルとして、迅速な解決を期待する。また、効果的かつ信頼できる債務の持続可能性分析に向けて、債務データの正確性と透明性の向上は極めて重要であるという認識の下、有志の債権者と共に、初のデータ共有の取組を通じて、債務データ突合のために世銀に詳細な貸付データを提供し、初期段階で計65億米ドルに上るデータギャップを特定した。MDBsが、貧困削減と繁栄の共有の達成に向け、気候変動やパンデミック等の課題に対処するための見直し・変革作業をさらに加速させることを奨励する。特別引出権(SDR)の自発的な融通等を通じた支援について、日本とフランスによる追加のプレッジによって既存の貢献と合わせて1,000億米ドルの世界的な野心を射程に入れたことを歓迎し、野心達成のために更なるプレッジを要請する。本年10月開催のG7アフリカラウンドテーブルにおいて、民間投資を更に動員するための重要な課題への対応に関する議論を継続する。4月に公表した「脱炭素時代における強靭なサプライチェーン構築に向けた財政・公的金融手段に係るハイレベル政策ガイダンス」を踏まえ、関心ある国々とともに、世銀グループ等の国際機関と協働して、遅くとも本年末までの立ち上げを目指し、「RISE(強靭で包摂的なサプライチェーンの強化)に向けたパートナーシップ」を策定している。RISEは、低・中所得国がクリーンエネルギー製品のサプライチェーンにおける、役割拡大に向けて支援することを目指す。海外直接投資(FDI)は新興・開発途上国の多額のインフラ需要経済効率性と強靭性様々なショックへの世界経済の強靭性を高め、G7の共通の価値観を断固として守り、自由で公正かつルールに基づく多国間システムを堅持することにより経済効率性を維持するために協力する。 10 ファイナンス 2023 Jul. Ⅰ 喫緊の世界の課題への対処ロシアのウクライナに対する侵略戦争とウクライナに対する支援G7は、ウクライナの緊急の短期的な資金ニーズへの対処と、周辺国やその他の深刻な影響を受けた国々への支援を継続することに強くコミットしている。国際社会と共に、2023年及び2024年初頭を対象に、ウクライナへの財政・経済支援のコミットメントを440億米ドルに増加させた。これは、4年間の総額156億米ドルのウクライナに対するIMF支援プログラムの承認を可能にした。また、復旧・復興支援においては民間資本の動員も極めて重要である。多国間投資保証機関等の取組と、開発金融機関(DFIs)間の協働等を通じてウクライナ及び影響を受けた国々を支援するためのウクライナ投資プラットフォームの設立合意(5月12日、東京)を歓迎する。 Ⅱ 世界経済の強靱性の強化気候変動排出を緩和する様々な政策手段の有効性についての理解を深めるOECDの「炭素削減策に関する包摂的フォーラム(IFCMA)」を支持する。パートナー国がそれぞれの固有の状況を反映しつつ、加速された野心的な移行を追求することを支援する「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)」を迅速に前進させる取組の継続にコミットする。また、経済全体の脱炭素化を推進する上でトランジション・ファイナンスが重要な役割を有しているとの認識を共有し、保険を含む災害リスクファイナンスにおける官民の協調の強化の重要性を確認する。G7新潟財務大臣・中央銀行総裁会議の成果

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