写真 5 中央が成田悠輔さん 6 ファイナンス 2023 Jul.客用メニューを出されるような感じですよね。成田悠輔さん 今の常識からすると難しいと思いますが、あらゆる価格や税が自由に変わることが当たり前になればあまり気にならなくなるのではと思います。今はお金で測られる価格で動く市場があって、市場により格差などの歪みが生じ、それを正すための分配を税と国家がしていますが、価格と税が融合することが未来のマクロ経済の大きな方向性じゃないかと思っています。さらにその先には、価格と税を一体でデザインする新しい貨幣制度みたいなものがあると思います。現行の法定通貨では難しいですが、暗号通貨みたいな仕組みであれば、ベーシックインカムやベーシックアセットのような再分配機能を通貨の仕組みの中に組み込むことが技術的にできます。そうすると、国家や税を使った再分配機能が、100年単位で見るとちょっとずつ消滅していく可能性さえあると考えています。その意味で、市場や国家の失敗みたいな話は、一物一価しか実行できないという技術的な限界が作り出した歴史上の一フィクションという可能性もあります。この時代が終わると、通貨・価格・税の一体システムをデザインすることで、国の機能も夜警国家的なものに縮小していくかもしれません。河本課長 普段我々が考えたこともなかった領域のお話ですが非常に面白い議論ですね。成田悠輔さん よくブラックと言われる官僚の方の働き方についても伺いたいのですが、財務省も含めた官庁が働き方を変えるためには、国会から変わらないと難しいでしょうか。河本課長 国会関係の作業については工夫の余地はあると思いますが、最終的には、役所の仕事に求められるスピード感や精緻さに対する社会の許容度みたいなところが影響すると思います。社会的な課題が発生したときに、「残業することになるので、それに対処する法案は来年の通常国会でいいですか?」と言って時間をいただけるのかどうかということですが、実際には難しいだろうと思います。松本課長 意思決定がトップダウンで、部下はその通り動くとすれば、業務時間は削れると思います。ただし、主張すべきことも控えてしまうようでよいのか、という悩みもあります。情報を広く共有してみんなで議論していくほうが、組織全体のモチベーションも上がりますが、時間がかかる可能性はあります。また、仕事の合理性でいうと、デジタルの活用で合理化できる余地はまだあると思います。昔は、職場の外ではメールの確認すらできなかったので、進歩はしていますが。成田悠輔さん デジタル対応がなかなか進まないのは、霞が関に専門家や専門部署がないからか、それともセキュリティなどの問題からなのでしょうか。松本課長 両方あると思います。前者は、デジタル庁もできましたし、省内でも担当部署が頑張っていますが、専門人材は足りていないと思います。また、官庁の業務が民間企業と比べて特殊なために、既存のシステムを丸ごと導入して解決、とはいかない点も、影響していると思います。成田悠輔さん お二人が入省したときと比べて、今の20代の官僚のタイプは変わってきていると思いますか。河本課長 根幹の部分は変わっていないと思います。国の制度といった大きな仕組みを通じて社会を良くしたいという気持ちは基本的にはあると思います。松本課長 一方で働き方の部分は大きく変わっています。女性職員も増え、男性でも共働き家庭がほとんどになっており、それを考慮した働き方、ワークライフバランスに変わってきています。改善途上であり、あり方を模索している、といったところだと思います。原田広報室長 話が尽きないところですが、本日はここで終わりにさせていただければと思います。財政の課題やミライの姿まで面白いお話が聞けました。また次回、違った切り口でお聞きできればと思います。財務省の働き方についておわりに
元のページ ../index.html#10