ファイナンス 2023年6月号 No.691
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地方創生コンシェルジュ北陸財務局富山財務事務所長 長谷川 正浩富山市は、「コンパクトシティ」の先進地として、国内外から高い評価を受けています。実際に、公共交通の活性化が沿線地区への居住に繋がるなどの好循環もあり、富山市人口の社会増が続くなどの成果が現れています。そのコンパクトシティの深化としての「富山市版スマートシティ」は、データサイエンスを活用した産官学連携の事業として注目を集めているところです。少子・高齢化などの問題が顕著となっている中山間地域をはじめとする郊外部においても、便利で安心できる持続可能なまちづくりが更に発展していくことを期待しています。ファイナンス 2023 Jun. 65SMART CITY TOYAMAのロゴマーク未来共創拠点施設「Sketch Lab」富山市デジタル技術やデータの活用はあくまで“手段”であり、スマートシティ政策に取り組む“目的”は市民生活の質および利便性の向上であることから、市民にとっての「ありたい暮らし」とは何かを把握するため、市内3ヶ所、計6回の市民ワークショップを開催し、参加した延べ119名の市民による約2,700の意見を基にビジョンを策定しました。今後はこのビジョンを市民の皆さまや企業・団体等に周知し、共有することで、産学官民が一体となって「富山市版スマートシティ」を推進していきたいと考えています。特に、スマートシティ関連サービスは多くの市民が関心を持ち、実際に使ってみることでサービス品質が向上すると考えられます。したがって、「富山市版スマートシティ」では、市民が真に求めるサービスで、その効果を実感しやすいものから優先的に取り組むこととしています。令和5年度の当初予算では「スマートシティ推進ビジョン特別枠」として44事業を計上するとともに、その中で、町内会等の電子回覧板アプリ導入を支援する「電子回覧板導入支援事業」やスマホを使ってネットスーパーを利用できるよう支援する「スマホ買物支援事業」など、市民の困りごとを解決する事業の拡充を図ったほか、交通不便エリアを対象として行う「自動運転車両実証実験」4.産学官民が共創するスマートシティスマートシティは行政だけで実現できるものではありません。デジタル技術やデータ利活用のノウハウを有する企業や研究機関、そして何より市民の参画が必要不可欠です。や「AIオンデマンド交通システム導入事業」、通院不便エリアを対象として行う「中山間地域オンライン診療・服薬指導実証実験」など、地域課題を解決するための実証実験にも積極的に取り組むこととしております。また、産学官がこれまで以上に連携しながらスマートシティに取り組んでいくため、推進組織として「富山市スマートシティ推進プラットフォーム」を設置することとしています。さらに、本市は平成30年に市内の居住人口の98.9%をカバーする「富山市センサーネットワーク」を構築し、IoTデータの収集環境を無償提供することで民間企業主導の実証実験を促すとともに、令和2年には未来共創拠点施設「Sketch Lab(スケッチラボ)」を整備し、産学官民の共創にも試行的に取り組んでいます。こうした本市特有のリソースも活用しながら、市民ニーズに合致したスマートシティ関連サービスの創出を図るとともに、コンパクトシティ政策とスマートシティ政策が融合した「富山市版スマートシティ」の実現を目指してまいります。「富山市版スマートシティ」の今後に期待が高まる

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