ファイナンス 2023年6月号 No.691
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0200891011121314151617181920212223(年)019851990消費者物価指数(総合)賃金上昇率(全産業)12345678910111212320214567891011122022(注1)月次データ。(注2)2020年2月~2022年5月の期間は、数値の公表なし。(出所)英国統計局【図表2】労働損失日数(月別)(千日)1,0008006004002004,0003,0001232023(年月)(注)賃金は、ボーナスを除く基本給(日本の「所定内給与」に相当。)、3か月移動平均。(出所)英国統計局2,0001,0002011年11月9971989年4,1291995200020052022年12月8432022年2,472201020152020(年)(注1)筆者が月次データを基に年次データを推計。(注2)2020年2月~2022年5月の期間は、数値の公表がないため2021年は0で表示。(出所)英国統計局*1) 労働損失日数は、英国統計局がストライキにより失われた労働時間を日数に換算し公表するもので、ストライキの規模を示す。*2) 2022年の労働損失日数は、2022年1月から5月の期間の数値の公表がないため、6月から12月の7か月の日数。1.はじめに2.ストライキによる労働損失日数海外経済の潮流 145大臣官房総合政策課 海外経済調査係 白石 達也3.公的部門でのストライキ頻発の背景また年間の労働損失日数で見てみると、2022年の労働損失日数は約247万日*2となり、1989年に記録した損失日数(約413万日)以来の損失日数となった。労働損失日数から見ると最近のストライキは歴史的に見ても大規模なものとなっていることが分かる。【図表3】労働損失日数(年別)(千日)5,000こういった歴史的に見ても大規模なストライキが起きている背景としては、冒頭にも述べたとおり、消費者物価指数の上昇率に賃金上昇率が追い付いていないことが考えられる。その中で、英国統計局は、運輸・郵便、医療、教育英国では2022年6月ごろから運輸・郵便、医療、教育といった公的部門を中心にストライキが断続的に実施されている。主な要因は、記録的な物価上昇による生活危機に反発したものである。英国の消費者物価指数の上昇率は2022年10月に前年同月比11.1%上昇と41年ぶりの上昇率を記録し2023年3月では同10.1%上昇と高水準の物価上昇率が続いている。しかし賃金上昇率は物価上昇に追い付いておらず、消費者物価指数の上昇率を超える賃上げを求めてストライキが行なわれている。本稿では、英国におけるストライキの動向について、規模、背景、英国経済への影響の観点から確認する。【図表1】消費者物価上昇率と賃金上昇率(前年同月比、%)121086420最近行われているストライキの規模を労働損失日数で確認する。労働損失日数*1は2022年6月以降増加傾向にあり、2022年6月には9.3万日が失われ、11月には46.1万日に増加し、2022年12月にはさらに増加し84.3万日となった。これは2011年11月の公的部門の年金改革をめぐる対立により記録した99.7万日以来の高い月間の記録である。 52 ファイナンス 2023 Jun.英国におけるストライキの動向

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