ファイナンス 2023年6月号 No.691
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5034567893 ※ 公庫保険データから筆者作成(計数は四捨五入)保険引受額の推移東日本大震災の発生(H22年度末(H233/11))新型コロナの発生(H31・R1年度末)*6) 商工組合中央金庫二十年史P.61。なお、同調査に基づけば、問屋は22.7%、金貸業は37.2%を占めており、今とは異なる金融環境・慣行が存在していたことが分かる。*7) 「中小企業金融の経済学 金融機関の役割 政府の役割」(植杉威一郎)においては、中小企業金融の特性について、次のように述べられている。 「…中小企業にとって、金融はその存続を左右する重要な意味をもつ。中小企業は大企業に比して利益率が低くキャッシュフローに乏しく、外部からの資金調達により自らの事業活動を賄う必要があるためである。中小企業が資金を調達する際には、株式や社債を市場で発行することが難しく、貸出市場で銀行や信用金庫・信用組合からの借入に頼ることが多い。さらにその借入も、借り手側の中小企業と貸し手側の金融機関の情報の非対称性により、特に不況期に難しくなる。…」(兆円)353025201510S63H元21122..331111..991100..001100..4499..2299..0088..002266..771188..111177..111122..881122..881133..111122..22金金融融安安定定化化保保証証HH1100~~HH1122(平成金融危機)101112131415161718191188..771144..331122..991133..441122..991122..331122..66(リーマンショック)202122232425261166..111133..441111..1199..4499..0088..5588..66緊緊急急保保証証HH2200~~HH22222728293031R23333..2288..8888..1177..6677..7788..33(年度)ファイナンス 2023 Jun. 31(図表2)信用保険業務の実績信用補完制度の解説信信用用保保険険等等業業務務のの実実績績((中中小小企企業業信信用用保保険険))あった。例えば、1932年に当時の商工省が行った調査において、「…代表的な八工業組合の組合員について調査した結果によれば、銀行からの借入金は総借入金の平均二四・五%であつた*6」とあるように、多くの中小企業者等は、銀行から融資を受けること自体困難であった。本質的には今にも通じる論点であると思われるが、中小企業者等への金融(貸付)というものは、(1)少額、(2)不定期、(3)予測困難という3点の特色があると言えるかと思われる*7。率直に言えば、その貸付コストに見合わないことが多い顧客層ということであり、銀行にしてみれば貸付しようとならないわけである。それが不景気な時であれば、言うまでもない。一方、だからといってそういった層になんら金融手段が無いとなると、そもそも生活が成り立たない。では、そういった層はどのような手段を取っていたかというと、簡単に言ってしまえば、インフォーマルな金融手段が機能していた。すなわち日本の場合、生計資金的な部分であれば、主に無尽・頼母子講といった手段が、商工業の事業資金的な部分であれば、いわゆる問屋金融等が機能していたわけである。勿論、戦前期の中小企業者等には、生計資金と事業資金の境目も曖昧な者が多くいたであろうから、はっきりと目的別に金融手段が分かれていたというよりは、あくまで代表的な金融手段として見るべきであろう。ちなみに、無尽・頼母子講とは、今となっては殆ど知られていないように思われるが、これは、会員間で掛金を出し合い、その会員間で資金融通を行う方式で

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