ファイナンス 2023年6月号 No.691
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スリランカの債務再編スは進められる。スリランカによる強固なオープンコミットメントにより、世界中が監視する中で債務再編が進められるため、交渉に参加しない国による抜け駆けを心配する必要はない。調整に長い時間を要したが、参加国が交渉に専念する環境は整えられているのだ。最後にスリランカのために債権国会合を創設したからといって、必ずしも、他の中所得国の債務問題にも自動的に同様の方式を当てはめ、債権国が協調して債務再編のプロセスを進めていくということにはならない。あくまでスリランカという個別国の債務問題にアドホックな最適解を探ったに過ぎず、他の中所得国の債務問題が表面化すれば、改めて、誰が主導し、どの債権国とどのように協力して、その国の債務問題に効率的、効果的に対処していくべきか考えなければならない。しかし、スリランカの一連のプロセス、例えば、資金保証供与の際にパリクラブ・非パリクラブの垣根を超えた協調したステートメントを公表したことや、債務国からオープンレターによるコミットメントを発出してもらったことなどは、画期的なものであり、今後、他の債務再編を進める上での参考になるだろう。今後、日本の財務省が主導したスリランカのプロセスが、他国からも成功事例、モデルケースとして活用され、幅広い債権国間の協調体制の構築が進んでいくことを期待する。 26 ファイナンス 2023 Jun.

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