ファイナンス 2023年6月号 No.691
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ファイナンス 2023 Jun. 17アジアにおける地域金融協力の推進(ASEAN+3,日中韓,日ASEAN)ける通貨と期間のミスマッチ(ドル等の外貨を海外から短期で借入れ、自国通貨建てで国内の長期融資を実施)の解消のため、ASEAN+3域内の現地通貨建て債券市場を育成し、域内の貯蓄を投資へと活用することを促進する取組みとして、2003年にABMIが開始された。ABMIの開始以来、ASEAN+3域内の現地通貨建て債券市場は着実に拡大している。本会議では、ADBの協力も得て「ABMI中期ロードマップ2019-2022」が成功裏に実施されたことを歓迎するとともに、サステナブル・ファイナンスやデジタル・トランスフォーメーション等の新たな潮流を踏まえた「新ABMI中期ロードマップ2023-2026」が承認された。【新しい議題】前述の3本の柱はこれまでASEAN+3の域内金融協力の骨子となっており、引き続き重要な議題であるが、他方で、気候変動やデジタル化の進展など地域を取り巻く環境が変わる中、域内協力を深化させ、より一層効果的なものとするため、新しい議題を取り込んだ議論も重要となっている。そこで、日本は自然災害リスクに対する財務強靭性の向上と、金融デジタル化による影響といった議題を推進してきた。エ.【新たな柱】災害リスクファイナンス(DRF)これまで日本は、自然災害リスクへの対応に保険スキームを活用し、ASEAN諸国の財務強靭性を向上させることを目的とした「東南アジア災害リスク保険ファシリティ(SEADRIF)」の立上げを主導するなど、自然災害リスクに対する財務強靭性の向上に係る取組みを推進してきた。本会議では、頻発化・激甚化する域内の自然災害に対応するため、将来生じうる経済的及び財務的損失に対する強靱性を高める重要性について認識が共有され、DRFがASEAN+3財務トラックの定例議題に格上げされることとなった。また、SEADRIFなどの既存の枠組みを活用し、保険その他商品の検討、知見共有の促進、域内における災害データの活用といった行動計画を盛り込んだ、「ASEAN+3災害リスクファイナンス・イニシアティブに係るアクションプラン 2023-2025」が承認された。オ.ASEAN+3財務プロセスの戦略的方向性ASEAN+3地域ではデジタル通貨等の金融デジタル化が急速に進んでおり、各国の経済発展と域内連携をますます強める機会となる一方、これまでとは異なる新たなリスクや脆弱性が出現する可能性がある。こうした観点から、日本は金融デジタル化に関する新たなイニシアティブを提起しており、昨年以降議論が進められてきた。本会議では、より速い危機の波及効果やデータの安全性・プライバシー等のリスクを示すとともに、迅速かつ効率的な決済システムの開発などの活用すべき機会を強調したうえで、域内金融協力の将来を見据えた提言を行っているAMROの報告書「金融デジタル化の機会と課題:ASEAN+3地域金融協力の新たな視座」が歓迎された。報告書においては、金融デジタル化に対応したAMROのサーベイランス強化や技術支援の活用、CMIMの見直しの議論等が提言として示されている。他にもインフラファイナンス、サステナブル・ファイナンスなどの取組みが議論で取り上げられた。本会議は2000年以降、ASEAN+3の会議と合わせて開催されており、日中韓の3か国で率直な意見交換ができる重要な場となっている。今年は韓国議長の下で開催され、日本からは鈴木大臣、植田総裁が出席した。域内各国の経済・金融情勢及び地域金融協力について意見交換が行われ、日中韓の連携の大切さが確認された。本年は日本とASEANの友好協力50周年に当たる節目の年であることを踏まえ、日本の主催で本会議を特別に開催し、鈴木大臣、植田総裁が議長を務めた。世界経済がパンデミックやロシアのウクライナ侵略の影響を受け、様々な不透明感が高まる中、世界の成長センターである日本とASEANが連携していくことは、地域はもとより世界経済の持続的な成長のために重要になっている。こうした状況を踏まえ、会議では、2. 第23回日中韓財務大臣・中央銀行総3. 日ASEAN特別財務大臣・中央銀行総裁会議裁会議

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