ファイナンス 2023年6月号 No.691
19/78

ファイナンス 2023 Jun. 15(会合の様子。鈴木大臣は下段左から7番目、植田総裁は上段左から5番目。)(1)世界と域内の経済・金融見通しや政策対応ASEAN+3マクロ経済リサーチ・オフィス(AMRO)、アジア開発銀行(ADB)、国際通貨基金(IMF)から世界・域内経済の見通しについて説明があり、COVID-19のパンデミックやロシアのウクライナ侵略2023年5月2日(火)、アジアにおける地域金融協力関連の会議として、第26回ASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会議及び第23回日中韓財務大臣・中央銀行総裁会議が韓国・仁川で開催された。ASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会議は1997年のアジア通貨危機を契機として、アジアの自助・金融セーフティーネットを構築する機運が高まる中、1999年にASEAN+3財務大臣会議が開催されたことを始まりとする(中央銀行総裁は2012年から参加)。日本は設立段階から議論に積極的にかかわっており、ASEAN+3域内の連携を強化する上で非常に重要な会議となっている。今年は、2019年以来4年ぶりの対面での開催となった。また、日本とASEANの友好協力50周年を記念して、日ASEAN特別財務大臣・中央銀行総裁会議が開催された。以下、本稿ではこれらの会議における議論の概要を紹介したい。本年はインドネシアと共に日本が共同議長を務め、日本からは鈴木財務大臣と植田日銀総裁が出席した。会議では(1)世界とASEAN+3域内の経済・金融見通しや政策対応についての意見交換、及び(2)ASEAN+3金融協力について議論しており、以下その概要を紹介する。の影響にも関わらず、2022年の域内成長率は約3%と堅調だったことが確認された。また、域内各国の経済・金融情勢についての意見交換では、日本から、ロシアのウクライナ侵略を厳しく非難するとともに世界経済・地域経済の主要なリスクとなっていることを指摘し、2023年はより力強い経済回復が期待される一方、金融環境の悪化、サプライチェーンの混乱、及びロシアのウクライナ侵略による世界的なコモディティ価格の上昇等が、地域経済の見通しに対する下振れリスクとなっていることが確認された。ASEAN+3地域の金融協力は、従来から3本の柱に沿って議論を行ってきた。これらの柱の議論とともに、域内金融協力を更に深化させる新しい議題を日本から提案しており、災害リスクファイナンス(DRF)については今回の会合で定例議題に格上げがなされた。以下、この従来の3本の柱と新しい議題という形で今回の会議の議論を紹介したい。ア.【第1の柱】チェンマイ・イニシアティブ(CMIM)1997年に発生したアジア通貨危機を教訓に、ASEAN+3では、急激な資本流出による危機が生じ1. 第26回ASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会議(2)地域金融協力についてアジアにおける地域金融協力の推進(ASEAN+3,日中韓,日ASEAN)国際局地域協力課長 陣田 直也/地域協力調整室長 日向寺 裕芽子/係長 穴沢 衛/松尾 洋平

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る