ファイナンス 2023年6月号 No.691
18/78

写真 6 対談風景(右側が辻愛沙子さん)かったことに原因があると思っています。こうした状況を踏まえて、多少のリスクがあることも認識しながら、顔を出して発信するということに取り組み始めました。こうした取組も含めて、ぜひ辻さんからも発信についてアドバイスをいただければ幸いです。辻愛沙子さん 難しい問題ですね。ただ財務省の方々は、誰かに言わされているわけではなく、自分の仕事として取り組んで発信しているので、そこを疑われる余地はないと思います。そこを正しく伝えるために、生の人の声を出すことは意義があると思います。例えば「ぶっちゃけ、一市民として増税はうれしくないけど、なぜ増税が必要なのか」を語れる方が必要だと思います。もう一つ思うのは、「知らん間に変わっている」という不信感を国民は抱いていると思います。これを解消することも大切ではないでしょうか。辻愛沙子さん 「失われた30年世代」の素朴な疑問として、生まれてこの方「日本の未来安泰だよね」と思ったことがないのですが、失われ続けている一番の理由は何なのでしょうか。国が色々な施策でやってきている内容が生活に返ってきている実感はなくて、自分の身の回りでいうとオフィスのある原宿ですら活気がなくなってきています。こうしたことに自分が起業家として何ができるか悩んでいるのですが、皆さんはどういった点に課題があると考えているのでしょうか。老月補佐 省内の勉強会で少子化について研究していますが、そこでわかったのは、この30年で、働く場における男女の固定的な格差が驚くほど変わっていないことです。これは、女性という人口の半分の力を活かせないことにそのままつながっていて、成長の大きな阻害要因になっていると思います。辻愛沙子さん ジェンダーギャップについて日本は遅れていると言われていますが、遅れているというより、変える努力をしてこなかったというのが日本の実情だと捉えています。この20年で、欧米諸国は意図して状況の改善を多種多様な手法で図り前へ進んだ訳ですが、日本だけはそのまま同じ場所で足踏みをしている状態といいますか。最後に、財務省で働いていて、日本の経済状況や将来に希望を持って向き合えていると思うか否か、お伺いできればと思います。老月補佐 変わらなすぎるという面もある一方、先ほど辻さんが言っていたような、ここ数年で感じられる変化や、「このままじゃダメだ」という危機感を持つ人が増えているように感じており、それが加速していけばそんなに悪い将来にはならないのではないかと思っています。吉越係長 今後人口が急に増えることは考えにくい中、縮小均衡がどういった社会になるか想像することは難しいですが、女性の活躍も含めて、この数年間で様々なことが変化していると感じており、また、現状を変えようという人たちがいる以上、希望を持ちたいと思います。辻愛沙子さん 畑が全然違うけれども、こうして話してみると同じ課題感を共有できることも多々あり、組織だけで見ず個々人の温度感を捉えることも忘れてはいけないなと感じました。こうした課題感を持つ層のボリュームが増えていくことで社会が進んでいくことを願っています。原田広報室長 本日はありがとうございました。財務省やその政策について、辻さんから率直な疑問やご意見をいただき、読者の方の疑問が解消された部分もあるのではないかと思います。また次回、違った切り口でお話を聞ければと思います。日本の未来についておわりに 14 ファイナンス 2023 Jun.

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る