ファイナンス 2023年6月号 No.691
17/78

写真 5 主税局調査課 外国調査第一係長 中村 茜 中村係長 私たちはほかの省庁や地方自治体、あるいは国際機関などに出向することもありますし、多くの方が地方や他の組織から財務省に出向されています。そうした組織の交流や多様性の中で一般的な感覚を保つようにしているのだと思います。老月補佐 かつての上司から、忙しくても、職場の外の人たちと交流すべきとアドバイスを受けました。これは役所の文化に染まりすぎて、世の中と感覚がずれないようにするという意味があったのだと思います。自分は子供を育てるなかで保育園や地域施設など世界が広がって、生活者目線みたいなものが格段に身に付いてきたと思います。これが土日も仕事に出てきて働いていると視野が狭まってしまうのだろうなと思います。辻愛沙子さん そうした感覚を持った人が多いんですね。こうして話していると財務省の人間味を感じます。一方で、組織政治やシステムで動いていく部分もきっと少なくないと思っていて、働いている中で、「もやっと」感じる部分などあるのでしょうか。中村係長 人事部署で働いたときのことです。財務省でも女性の採用を増やしていますが、普段は男女関係なく一職員として働いているのに、採用時には「男性」「女性」と分けて捉えられている気がして、「もやっと」することがありました。辻愛沙子さん その「もやっと」はビジネスの領域でも共感できるように思います。「女性ならではの企画を」と言われると、女性ならではかどうかはわからないけど“私としては”と思ったり。女性の働き方という意味では、先輩方のロールがあると見えてくる景色も違うと思いますが、そういった例はあるのでしょうか。老月補佐 最近こそ女性を3割以上採用するルールがありますが、先輩の女性職員は少ない状況です。一方で、そうした先輩たちも家庭と仕事の関係で努力をされていて、先輩たちの様々なスタイルが、選択肢として参考になりました。吉越係長 フロンティアとして本当に苦労されてきた先輩方を見ると、自分はまだまだだなと思うところはありますが、先輩方のおかげで、私たちの世代が働きやすくなっているので、私たちも後輩のために何かできたらよいなと思っています。辻愛沙子さん 時代の分岐的に、今が過渡期なのではないかなと思っています。起業家でみても、95年生まれくらいから女性起業家がとても増えているように感じます。また、ビジネスカンファレンスに参加しても、今では女性がいるのが当然になっていて、むしろ全員男性のケースだと「ヤバい」みたいな空気が当たり前になってきています。一方で、投資家側のジェンダーギャップに課題はまだまだあります。たとえばフェムテックみたいな女性向け商材がトレンドワードにはなっていますが、圧倒的に男性比率の高い投資家側への課題意識の共有など難しい部分もあります。また、私の会社は自己資本100%でやっているのですが、若年者が経営している会社だと「バックに誰かいる」とか言われることがあります。また、コメンテーターとして自分で勉強したり考えたりして自分の言葉で話しているのに、政治の話について若い女性がコメントすると、「誰かに言わされている」と言われることもあります。これはきっと年配の男性なら中々起こらない現象ではないでしょうか。女性が政治や官僚の世界に入りそこで続けていくことにはまだ難しさもあるかもしれませんが、その世界に入りたいと思う人が増えてくると風向きも変わってくるのではないかと思います。原田広報室長 財務省の情報発信について伺いたいと思います。財務省のイメージについては、ここまで何点か触れていただきましたが、そうしたイメージがあるのは、「私たちは何者か」という点を伝えてこなファイナンス 2023 Jun. 13財務省の広報について

元のページ  ../index.html#17

このブックを見る