ファイナンス 2023年6月号 No.691
15/78

写真 2 辻 愛沙子さん((株)arca CEO) ファイナンス 2023 Jun. 11まで理解していない部分も多いので、今日はより詳しくその役割や働き方まで、様々な視点でお伺いできればと思っています。また、広告という仕事柄取り扱うことも多く、特に関心のある社会課題はジェンダー問題ということもあり、とても男性的なイメージがある財務省という組織で、みなさんがどう働かれているのかジェンダー的な目線でのリアルなお話も教えていただければ嬉しいです。辻愛沙子さん 最初に、財務省の組織についてお伺いできればと思います。まず、財務省にはそれぞれどのような役割を持った部局が存在しているのか、改めてお伺いできればと思います。「課税」のイメージが強いからか、“新しい税収を開拓できた人が出世する”といった言説もよく耳にします。国民が税金を払う制度を作れば作るほど出世する世界…という印象を持っている人も少なくないように思うのですが、どんな組織体でどんな方々が働かれているのか、お伺いできますでしょうか。老月補佐 理財局の老月です。財務省は、6つの部局に分かれていて、予算を担当する「主計局」、税制を担当する「主税局」、関税や税関を担当する「関税局」、国の財産の管理等を担当する「理財局」、国際関係を担当する「国際局」、そして総務部門の「大臣官房」で構成されています。この5階建ての古い建物には財務省と国税庁が入っていて、合わせて3千人程度の職員が働いています。また、全国の税務署等まで含めた財務省組織全体としては約7万人が働いています。辻愛沙子さん 予算管理や税制、国有財産の管理…というイメージが強いですが、改めて伺うとかなり幅広い領域を担われているのですね。7万人もいる組織というのも驚きです。みなさんはどういった背景や希望があって、財務省で働くという選択をされたのでしょうか。中村係長 主税局の中村です。入省の動機は人それぞれだと思います。私は当初、財務省に興味はなかったのですが、説明会に参加した際に職員が熱く語る姿がかっこよく感じられて、自分も一緒に働いてみたいと思うようになりました。辻愛沙子さん たしかに、皆さんと少し同じ空間を共有しただけで、イメージがかなり変わり、和気藹々とした組織なのだと実感しました。表現が適切かわかりませんが、財務省のイメージは、みんなすごくフォーマルな装いで、「業務時間中の私語は慎んでください」みたいな堅い雰囲気だと思っていました(笑)。一方で、財務省のパブリックイメージとして、「緊縮財政」や「増税」といったイメージが、昨今世間で広まっていると感じますが、こうした世論のイメージをどう捉えているのか、あるいは実態とのギャップがもしあればそれも教えて頂ければと思います。吉越係長 国際局の吉越です。財務省の外からみると、私たちは「増税のために動いている冷血なサイボーグ」のようなイメージがあるかもしれませんが、職場には人間味あふれる人も多いです。私たちも人間なので、普通に悩んだり相談したりしながら、日本の未来のためになることは何かと考えています。辻愛沙子さん なるほど。そういった正義感や倫理観といった人間性や「どうやったら人のため・国のためになるか」という想いは、意思決定プロセスで反映されるものなのでしょうか。“国の財政を司る”と聞くと、そこで決まることによって国の方向性が大きく変わることもあり、慎重な検討と意思決定が必要とされる重い責任が伴う業務ですよね。そうした責任について、その怖さみたいなことを感じることはありますか。老月補佐 財務省に限らず府省庁においては、多くの政策分野ごとに法令で定められた外部有識者による審議会等が設置され、政策の大きな方向性や方針が議論財務省について

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る