ファイナンス 2023年5月号 No.690
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声声声声声 現在世代ファイナンス 2023 May 3未来人の参加「将来世代の声も、現在の選択に反映する意思決定・合意形成のしくみ」はどうすれば作れるでしょうか?決定者例えば最初の実践例は岩手県矢巾町フューチャーデザイン(FD)は、未来を想像し、そこに生きる人たちの立場になってみることで、持続可能な選択を意識しやすくなる手法として注目を集めつつある。こどもや孫のためにした行動が、自分自身を幸せな気持ちにさせると感じたことはないだろうか。そうした気持ちは親と子の間だけではなく、現在世代と将来世代との間にも成り立つと考えられる。つまり、現在世代が自分の利益を差し置いても将来世代のためになることをしてあげたいという気持ちを持つことができれば、私たちの社会は持続可能なものになっていくことが期待できる。FDは西條辰義氏(京都先端科学大学特任教授)によって提唱され、地方自治体などで地域社会が抱える問題を解決する手法として、活用され始めている。自治体による最初の実践例は岩手県矢巾町のケースと言われる。同町では「2060年矢巾町ビジョン」を策定するに当たり、FDの手法が用いられた。ここでは参加者が「現在世代グループ」と「仮想将来世代グループ」に分かれて、それぞれの立場からビジョンを策定した。そして、最終的には現代世代グループと仮想将来世代グループをペアにして、今後5年以内に実施すべき優先順位の高い政策を選定した。仮想将来世代グループが参加することで、「矢巾町の利益だけではなく、地域・社会全体の最適性の視点から議論を展開すること」や「より時間のかかる複雑な課題の解決にこそ優先度を高める判断をすること」などが可能になったという。ほかにも長野県松本市や大阪府吹田市、京都府宇治市などに実践例がある。財務省では財政制度等審議会において議題として取り上げられ、その可能性を探っている。フューチャーデザインの目的フューチャーデザインFDとは何かFDとは何か持続可能な選択を可能にする持続可能な選択を可能にする手法として自治体で活用が進む手法として自治体で活用が進む

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