済に悪影響をもたらすため、出来る限り避けられてきた(国内の経済状況が悪化した場合、対外的な債権者の回収可能性もより危ぶまれる可能性もある)。しかしながら、国内的な債務シェアが大きくなるについて、対外債務の再編のみで債務の持続可能性が担保できるのか、あるいはそれで国外の債権者が納得するのか、ということもより大きなイシューとなってきている。より議論の幅を広げれば、債務国の債務構成のうち、どの程度債務再編の可能性があるのかは、債務持続可能性分析(あるいはIMF自身の債権回収可能性)の重要な課題となっている。ある国では、継続的な外的ショックや改革の遅れが続き、あるいは地政学的な問題によってバイでの譲許的ファイナンスへのアクセスが困難になるにつれ、IMFを含むMDBsのシェアが支配的になるとともに、非譲許的な国内債務のシェアが拡大してきた。そうした場合、無理に国内的な債務再編を進めるか、あるいはIMF等のMDBsが更なる債権回収のリスクを承知した上で追い貸ししてくしか道はなくなってくる(あるいは、ハイパーインフレや為替の急落等によって経済が勝手にアジャストしていくこととなるが、対外債務負担はこれによって軽減されない)。もちろん、こうした状況を防ぐためにも、事前に経済・財政改革を進めることが重要であるが、パンデミックのショック等で債務状況が悪化する中、このような八方塞がりとなってしまうリスクも増加している。翻って日本の債務構成を考えると、安定的な国内消化は日本の高い公的債務比率を支えてきたが、対外債務の再編によって経済を立て直す道は閉ざされていると言える(言い換えれば、債務再編は直接日本の債権者の負担となる)。日本においても、リスクが顕在化する前に経済・財政改革を進めることの重要性は言うまでもない。更に、より将来に視点を広げると、誰が今後の国際的なファイナンスを供給していくのかということも考えなければならない。ここで議論したように、国際的な債権者のシェアは大きく変化してきたが、それは国家的な戦略を基に中国等が融資を増やしてきたという事実もあるが、パリクラブ等の先進国が開発資金の提供を相対的に減らしてきたという事実もある。ある意味、先般の公的債務再編の中で、中国等はこうした急拡大した融資のツケを払っているわけであるが、このようなリスクを認識したうえで、誰が将来の開発資金等を提供していくのかは不透明である。もちろん、債務の持続可能性を考慮しながら、貸出条件等において、各国が責任ある貸出(借入)行動をとっていくべきことは大前提であるが、将来にわたってバイの資金供給が滞ってしまった場合、より国際的な債務リスク(あるいは成長のリスク)が高まっていく可能性があることも否定できない。今般の急増する公的債務再編とその枠組みの変化は、将来にわたる国際的な開発資金のあり方にも疑問を投げかけているのかもしれない。 54 ファイナンス 2023 May
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