ファイナンス 2023年5月号 No.690
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[9]. 服部孝洋(2023c)「我が国における公的資金注入および一時国有化スキーム−金融危機対応措置(預金保険法102条スキーム)について−」『ファイナンス』、49−59.[10]. 松澤登(2014)「金融機関の新たな破綻処理制度と保険会社[2]. 中曽宏(2022)「最後の防衛線 危機と日本銀行」日経BP 日 ファイナンス 2023 May 33*20) 例えば、松澤(2014)は「非保険金融業務,典型的にはCDSのようなデリバティブ業務を行うようなことがなければ,あるいは銀行や証券会社などと大規模な相互取引(資本持合など)をしていない限り,システム上重要な保険会社とは言い難いものと考えられる。この点,システム上重要な業務として把握されると思われるデリバティブ取引についていえば,日本の大手社ではヘッジ目的での活用がほとんどである。そうすると一般には現状の日本の保険会社について秩序ある処理による措置がなされることは可能性としては高くないものと思われる」(p.65-66)と指摘しています。*21) 現時点では、第一生命ホールディングス株式会社、東京海上ホールディングス株式会社、MS&AD インシュアランス グループ ホールディングス株式会社、SOMPO ホールディングス株式会社が指定されています。*22) 下記を参照してください。 *23) 中村(2021)を参照。*24) 厳密に言えば、基準のレベル感や選定プロセス等に違いがある点にご留意ください。https://www.fsa.go.jp/news/r2/hoken/20201030-2/202010.pdf参考文献[1]. 木下智博(2018)「金融危機と対峙する『最後の貸し手』中央銀行:破綻処理を促す新たな発動原則の提言:バジョットを超えて」勁草書房本経済新聞出版[3]. 中村亮一(2021)「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況−48グループのうちの45グループが明らかに−」ニッセイ基礎研究所[4]. 日本銀行金融機構局・金融庁監督局・預金保険機構調査国際部(2022)「巨大金融機関の破綻処理制度改革の軌跡―10年目の節目を越えて―」『日銀レビュー』2022-J-7.[5]. 服部孝洋(2022a)「バーゼル規制入門―自己資本比率規制を中心に―」『ファイナンス』、28−39.[6]. 服部孝洋(2022b)「AT1債およびバーゼルⅢ適格Tier2債(BⅢT2債)入門―バーゼルⅢ対応資本性証券(ハイブリッド証券)について―」『ファイナンス』14−24.[7]. 服部孝洋(2023a)「システム上重要な銀行入門−「大きすぎて潰せない(TBTF)」問題について−」『ファイナンス』、40−51.[8]. 服部孝洋(2023b)「金融機関の破綻処理及び預金保険入門」『ファイナンス』、50−60.の課題」保険学雑誌[11]. 森田宗男(2015)「国際金融規制改革の最近の動向」『証券レビュー』日本証券経済研究所[編]55(1), 1−67.[12]. 柳澤伯夫(2021)「平成金融危機 初代金融再生委員長の回顧」日本経済新聞出版[13]. 山本慶子(2014)「金融機関の早期破綻処理のための法的一考察:破綻した金融機関の株主の権利を巡る欧米での議論を踏まえて」『金融研究』第33巻第3号(2014年7月発行)[14]. ジョン・アーマー、ダン・オーレイ、ポール・デイヴィス、ルカ・エンリケス、ジェフリー・ゴードン、コリン・メイヤー、ジェニファー・ペイン(2020)「金融規制の原則」きんざい我が国における金融機関の秩序ある処理(特定第一号措置及び特定第二号措置)とは考えにくく,この枠組みが適用される可能性は高くない」としています。また、2008年の金融危機時にはAIGに関するTBTF問題が議論されましたが、その際に特に問題になったのはCDSなどのデリバティブとも言えます。前述のとおり、現在ではCDSなど標準的なデリバティブは中央清算がなされていますし、本邦保険会社のデリバティブのポジションは相対的に小さいという見方もあります*20(服部(2023a)では、システム上重要な保険については資本賦課がなされていない点を指摘しました)。もっとも、金融庁は、本邦における4つの保険会社*21について「国際的に活動する保険グループ(Internationally Active Insurance Groups, IAIGs)」として指定しています*22。IAIGsとは、「国際的に有意なレベルで保険事業活動を展開している保険グループ」を指し、保険監督者国際機構(IAIS)により「国際的活動」及び「規模」という二つの観点で指定され、特別な監督や規制が課されています*23(筆者の解釈では、IAIGsとはバーゼル規制における国際統一基準行に似た概念*24です)。このような観点から、本邦保険会社の中にも、システム上重要な保険会社が存在しうるとみる実務家もいます。5.おわりに本稿では、預金保険法126条の二が定める秩序ある処理について説明しました。次回はTLAC規制を取り上げることを予定しています。

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