無 (出所) 日本銀行・金融庁・預金保険機構(2022)「巨大金融機関の破綻処理制度改革の軌跡」をベースに筆者修正(注) 木下(2018)ではこの図表に複数の注記が付されています。本稿では紙面の関係上、省略していますが、正確な記載を知りたい読者は同書を参照してください。(出所)木下(2018)図表7 預金保険法における破綻処理スキームとPON条項の発動(金融危機対応措置:銀行等が対象)図表8 日本銀行による最後の貸し手機能の概要名称第1号措置第2号措置第3号措置過小資本時破綻または債務超過時破綻かつ債務超過時(金融機関の秩序ある処理: 銀行、銀行持株会社、証券会社、保険会社、 金融持株会社等が対象)特定第1号措置過小資本時特定第2号措置債務超過または支払停止時 (これらのおそれを含む)日銀法の根拠必要とされる状況や目的対象先金利担保期間政府との関係*18) ここでの説明は日銀のウェブサイトの説明をベースにしております。詳細は下記をご覧ください。 https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/pfsys/e17.htm資本の状況PON条項の発動PON条項発動せずPON条項発動PON条項発動PON条項発動せずPON条項発動33条必要に応じ、個別金融機関に対し、機動的・弾力的に行う支払い能力のある金融機関等支払い能力のある金融機関等債務超過の金融機関等を含む基準貸付利率必要その都度、決定認可不要(出所)木下(2018)債務超過の金融機関向け預金払戻し資金等の供給破綻処理を進める目的37条コンピュータ・システム障害等の偶発的な事由により不測の一時的な資金不足が生じた金融機関等に対し、資金決済の円滑確保の必要に応じて行う基準貸付金利1か月認可不要支払い能力のある金融機関向け (債務超過金融機関向けは禁止)一時的に不足する流動性の供給破綻以降破綻や連鎖破綻の防止が目的無担保システミック・リスクの顕在化の惧れがある場合に、信用秩序維持の観点から、特別な条件により行うその都度、決定不要(担保を徴求しないなど特別な条件をその都度、決定)その都度、決定政府の要請破綻の前有担保ファイナンス 2023 May 31呼称有担保貸付け一時貸付け日銀の特融特融38条我が国における金融機関の秩序ある処理(特定第一号措置及び特定第二号措置)図表9 日本銀行の特融と伝統的な中央銀行の最後の貸し手機能伝統的な中央銀行の最後の貸し手機能象となる金融機関が発行したAT1債やバーゼル対応Tier2債の元本削減がなされると解釈されます。その一方、預金保険法102条の第一号措置及び預金保険法126条の二の特定第一号措置の場合(例えば、りそな銀行のような公的資金注入の場合)、PON条項にヒットしない点に注意が必要です。なお、国内基準行の場合は筆者が記載した「バーゼル規制入門」(服部, 2022a)で説明したとおり、求められているのはコア資本要件のみであり、AT1がない点に注意してください。クレディ・スイスが発行したAT1債の無価値化についてはBOXを参照してください。最後に、秩序ある処理にかかるその他の話題について取り上げます。まず、本稿では、主に政府の役割について議論してきましたが、中央銀行には最後の貸し手機能があります。図表8が日銀による最後の貸し手機能の概要を示していますが、有担保貸付け(日銀法33条)、一時貸付け(日銀法37条)、特融(日銀法38条)で構成されます。本節で取り上げる日銀特融とは、日銀が一時的な資金不足に陥った金融機関に対し、他に資金の供給を行う主体がいない場合、最後の貸し手として一時的な資金の貸付(流動性の供給)を行うことです*18。この特融は、我が国における金融危機対応制度が十分に整備されていなかった平成金融危機において広く活用されました。もっとも、木下(2018)が指摘しているとおり、日銀特融は、伝統的な中央銀行の最後の貸し手機能と異なる特徴を有しています。中央銀行の伝統的な最後の貸し手機能を考える上でよく知られているバジョット原則という考え方では、金融システム不安につながる流動性危機の際には、市場よりも高い金利で無制限に、有担保で貸し付けを行うべきとされています。それに対して、1990年代の危機における日銀特融では、債務超過の可能性がある金融機関に対しても無担保で貸し出しを行うという破綻時流動性供給に近い役割を担っていました。木下(2018)は、図表9のとおり、伝統的な中央銀行の最後の貸し手機能と日銀特融との違いについて5点指摘しています。しかしながら、現在は政府・預金保険機構において金融危機対応ツールが整備されてきたことから、日銀4.秩序ある処理にかかるその他の話題4.1 日銀特融
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