ファイナンス 2023年5月号 No.690
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ず*12、実務上の判断基準は不明確です。(*) バーゼルⅢ適格(シニア債等) (出所)金融庁資料より抜粋その他Tier1資本*①内部TLACを用いた主要子会社の損失の吸収ファイナンス 2023 May 29外部TLAC適格負債普通株式等Tier1資本持持株株会会社社形形態態をを採採るる本本邦邦TLAC対対象象SIBsのの秩秩序序ああるる処処理理のの一一例例(銀行)(証券)金融危機対応会議金融危機対応会議金融危機対応会議内閣総理大臣内閣総理大臣Tier2資本*②特定認定国内処理対象会社(持株会社)主要子会社A主要子会社B主要子会社は通常通り営業を継続(その他)(銀行)④持株会社の倒産手続等③銀行持株会社のシステム上③持株会社のシステム上重要な取引に係る事業等重要な取引に係る事業等(主要子会社の株式を含む)(主要子会社の株式を含む)の譲渡の譲渡主要主要子会社C子会社A預金保険機構特定承継金融機関等主要子会社B主要子会社C受受皿皿ととななるる金金融融機機関関等等特定認定から原則2年以内に再譲渡(証券)(その他)(参考図)100%出資*12) 預金保険法改正後に実施されたIMFのレビューにおいても、この点が指摘されています。 *13) 金融庁「金融システムの安定に資する総損失吸収力(TLAC)に係る枠組み整備の方針について」(https://www.fsa.go.jp/news/30/ginkou/20180413/01.pdf)を参照。なお、望ましい処理戦略として特定第二号措置の適用を示しているものの、状況に応じて異なる処理を行う可能性も排除されていません。https://www.imf.org/en/Publications/CR/Issues/2017/07/31/Japan-Financial-System-Stability-Assessment-45151図表6 本邦4SIBsに対する望ましい破綻処理戦略我が国における金融機関の秩序ある処理(特定第一号措置及び特定第二号措置)前述のとおり、秩序ある処理では、「良い資産vs悪い資産」という概念がなく、「システム上重要な取引があるかないか」が問題になっています。その意味では、仮に悪い資産であっても、破綻処理により無秩序に清算されることで市場に混乱を生じる恐れがあれば、ブリッジ金融機関に移管する可能性がある点に注意が必要です。また、秩序ある処理が用いられるか、あるいは、預金保険法102条スキームが用いられるか、という意味では、銀行の場合、預金保険法102条スキームあるいは秩序ある処理のどちらかが選択可能である一方、証券会社や保険会社、金融持株会社であれば、秩序ある処理のみである点に注意してください。なお、特定第二号措置の認定は、預金保険法102条スキームの第二号措置、第三号措置と同様に、AT1(Additional Tier 1)債やバーゼル対応Tier2債の契約上のベイルインを行うトリガーとされています。したがって、特定第二号措置の認定をもってこれらの債務の元本削減または株式転換が行われることで、自己資本比率を回復することが可能になっています。この詳細は後程議論します(ベイルインの詳細については服部(2022b)を参照ください)。現在我が国でG-SIBsに指定されている3メガバンク、及びD-SIBのうち野村ホールディングス(「4SIBs」)について金融庁が公表している破綻処理戦略においては、秩序ある処理の特定第二号措置の適用が想定されており、処理スキームの概念図も公表されています(図表6)*13。特定第二号措置は潜在的な対象金融機関が幅広い上に実際の適用事例が未だないため、イメージがつきづらいですが、金融危機以降、TBTF問題を防ぐという問題意識から秩序ある処理が導入された経緯を考えると、我が国で特にシステム上重要な金融機関である4SIBsが特定第二号措置の主な対象という見方もできます(そのように見る実務家も少なくありません)。このケースでは、最上位である持株会社に対して特定第二号措置を適用して、持株会社が発行するAT1債、バーゼル対応Tier2債のベイルインをトリガーさせるとともに(これらの元本削減をするとともに)、銀行などの主要な子会社の株式を含む重要な資産・負債を預金保険機構傘下に設立されているブリッジ金融機関(「特定承継金融機関」)に譲渡します。これにより、これらの主要子会社の業務は継続しつつも、その他3.3  本邦4SIBsに対する特定第二号措置の適用

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