https://www.dic.go.jp/katsudo/page_001653.html*9) ここでの説明は下記を参照してみます。 *10) 2号措置の場合「破綻金融機関又はその財産をもつて債務を完済することができない」(債務超過)、3号措置の場合、「破綻金融機関に該当する銀行等であつて、その財産をもつて債務を完済することができないもの」(債務超過)になります。また、破綻金融機関は、「財産の状況に照らし預金等の払戻しを停止するおそれのある金融機関又は預金等の払戻しを停止した金融機関(預金保険法第2条4項)」とされています。*11) 我が国における早期破綻処理に関する法的論点については山本(2014)を参照してください。秩序ある処理では、日本振興銀行の破綻処理で行ったような「良い資産vs悪い資産」という概念がない点にも注意が必要です。秩序ある処理では、巨大な金融機関がもたらすシステミック・リスクが問題にされているため、「良い資産vs悪い資産」ではなく、「システム上重要な取引があるかないか」が問題とされています。図表5でも、特定第一号措置の対象となる金融機関が「システム上重要な取引」を有していることが前提になっている点が確認できます。システミック・リスクについてはOTCデリバティブ規制等でも対応もっとも、金融危機以降、市場型のシステミック・リスクについては、OTCデリバティブ規制や証拠金規制などを通じて規制強化されている点も重要です。現在、金利スワップなどの標準的なデリバティブについては中央清算機関を通じて清算する義務が課されていること、また、中央清算されないデリバティブについては証拠金規制により厚めの証拠金が求められています。そのため、図表5における「システム上重要な取引」が有するリスクを軽減する規制が別途敷かれている点にも注意してください(詳細は筆者が記載した「OTCデリバティブ規制入門」や「証拠金規制入門」をご参照ください)。また、FSBの「主要な特性」では、金融機関の破綻処理時に、デリバティブ取引等の一斉な巻き戻しによる金融システムの混乱を防ぐため、破綻処理当局がデリバティブ契約等の早期解約条項の発動を一時的に停止できる規定を設けるよう定められています。このような動きを踏まえ、我が国でも2013年の預金保険法改正において、預金保険法137条の三に、危機対応措置や秩序ある処理の発動時に、一定期間デリバティブ契約等の早期解除条項の発動を制限することができる規定が盛り込まれました。こうした規定は「ステイ」と呼ばれており、各国で同様の法整備が進んでいます。金融機関の信用不安から、我が国の金融市場その他の金融システムの著しい混乱が生ずるおそれがあると判断され、かつ当該金融機関が業務継続を行うことが困難な場合(金融機関等が債務超過又は債務超過のおそれ、支払停止又は支払停止のおそれがあるとき)には、特定第二号措置が取られます。特定第二号措置とは、対象となる金融機関を預金保険機構の特別監視下におき、預金保険機構が管理処分権を掌握しつつ、金融システムの安定を図るため不可欠な債務等を他の金融機関や、預金保険機構傘下に設立するブリッジ金融機関(特定承継金融機関等)に引き継ぎつつ、流動性供給等を行うことで、市場の混乱を防ぐものです*9。特定第一号措置と同様、対象金融機関を預金保険機構の特別監視の下に置きますが、特定第二号措置では、破綻した金融機関の業務や財産処分権を掌握する「特定管理」と呼ばれるより強い権限を有しています。秩序ある処理における破綻処理スキームである特定第二号措置と、預金保険法102条スキームである第二号、第三号措置の大きな違いとして、前述の流動性供給に加え、破綻処理開始の認定条件が挙げられます。この点は前節において秩序ある処理の特徴として説明しましたが、預金保険法102条スキームにおける破綻処理は不良債権型の危機を想定しており、原則としてバランスシート上、債務超過になっていることが認定条件*10となっています。しかし、秩序ある処理においては、市場型危機に伴って金融機関の急激な信用不安が生じることを想定しているため、必ずしも債務超過に陥っていなくとも早期の処理開始が可能な枠組みとなっています*11。具体的には、「金融機関等が債務超過又は債務超過のおそれ、支払停止又は支払停止のおそれがあるとき」に特定第二号措置の認定が可能とされています。FSBの「主要な特性」においても、システム上重要な金融機関の破綻処理枠組みにおいては、バランスシート上の債務超過になるよりも早い段階で破綻処理を開始できるべきとされており、グローバルな破綻処理枠組み整備の方向性とも整合的です。他方で、具体的にどのような基準をもって特定第二号措置の認定を行うかは法令上明確に示されておら 28 ファイナンス 2023 May3.2 特定第二号措置
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