ファイナンス 2023年5月号 No.690
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預金保険機構== (出所)金融庁資料より抜粋ファイナンス 2023 May 27*6) ここでの表現は下記を参照しています。 *7) ここでの表現は下記を参照しています。 *8) ただし、金融業界の負担による特定負担金のみで危機対応勘定の処理を行う場合、金融システムの著しい混乱が生じる可能性があるため、そのようなhttps://www.dic.go.jp/katsudo/page_001653.htmlhttps://www.dic.go.jp/katsudo/page_001653.html場合に限って政府が一部費用を補助することが出来るとの例外規定が設けられています。・事業の譲渡・資産の売却・優先株式等の引受け等13銀行・保険・証券カウンター・パーティ監視経営権・財産管理処分権一般の業務(預金・保険契約等)預金者・保険契約者等システム上重要な取引金融機関金金融融機機関関のの秩秩序序ああるる処処理理((22))((債債務務超超過過ででなないいここととをを前前提提))流動性供給約定通り履行取引の縮小・解消継続約定通り履行銀行・保険・証券カウンター・パーティシステム上重要な取引<自力再建><第三者支援><事業再構築>一般の業務(預金・保険契約等)預金者・保険契約者等金融機関図表5 特定第1号措置(債務超過でないことを前提)我が国における金融機関の秩序ある処理(特定第一号措置及び特定第二号措置)ます*6(この図はこのスキームを説明する際に必ず用いられる図です)。前述のとおり、特定第一号措置は債務超過ではない金融機関のみを対象としていますが、この図にあるとおり、同措置が実施される場合、まず、対象金融機関を預金保険機構の特別監視の下に置きます。特別監視とは、対象となる金融機関の業務の遂行並びに財産の管理及び処分について、預金保険機構が必要な助言等(助言、指導又は勧告)をすることを指しています*7(後述しますが、特定第二号措置では「特定管理」と呼ばれるより強い権限を有しています)。特定第一号措置では、破綻処理ではなく、金融機関が預金保険機構から流動性供給等を受けながら業務を維持しつつ再建を目指すこととされています。信用不安に直面する金融機関に対して預金保険機構が流動性等のバックアップを行うことで市場の信認を回復し、金融システム全体への危機の伝播を防ぎながら秩序ある形で取引の縮小や事業再建を可能とする枠組みです。平成金融危機の際には日銀が「特融」と呼ばれる流動性供給措置を用いて危機に陥った金融機関の支援を行っていましたが、秩序ある処理の整備により、日銀が危機に陥った金融機関へのエクスポージャーを直接的に拡大することなく、預金保険機構が流動性供給を行うスキームが整備されることとなりました。預金保険機構は、政府保証の下、債券の発行による市場調達や日銀からの借り入れ等を通じて資金調達し、金融機関に対して流動性供給を行うこととなります。なお、預金保険機構は資金調達時に政府保証を用いるものの、仮に預金保険機構からの貸付において損失が発生した場合には危機対応勘定で処理し、原則*8として事後的に金融機関等から特定負担金を徴収して補填するとされています。特定第一号措置では金融機関の資本増強を行うスキームが存在している点も重要です。具体的には、預金保険機構が、対象となる金融機関が発行する優先株や劣後債等を購入する(引き受ける)ことが可能になっています。資本増強という仕組みが存在しているという観点では、預金保険法102条スキームにおける第一号措置と類似しているとも言えます。しかし、預金保険法102条スキームにおける第一号措置では、服部(2023c)で強調したとおり、取り得るツールは「資本増強のみ」になります。その一方、特定第一号措置では、流動性供給、さらに資産の買取り等の追加的なツールが使えるという点で、政府は資本が薄くなった金融機関に対して幅広い措置をとることが可能であると解釈できます。あるいは、秩序ある処理では、市場型の危機を想定していることから、流動性供給等が必要となるような事態を想定したスキームという解釈も可能です。

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