国庫課集合写真(財務省図書館閲覧室の歴代財務省・大蔵省の看板の前で。)財務省の礎(いしずえ) 国庫課へようこそ点から発想されたものである。先進国で実装している国は未だないが、各国で調査研究が進んでいる。大きく、ホールセール型とリテール型に分けられる。ホールセール型とは、銀行間決済などの大口決済においてCBDCを使うことができないか、というものである。一方、リテール型とは、簡単に言うと、我々が日常使っている紙幣や貨幣をデジタル化できないか、というものである。ただ、改めて日常を振り返ると、我々が貨幣などを使う機会は大きく減りつつあるのではないだろうか。○○ペイであったり、交通系ICカードであったり、クレジットカードを使うことで、お財布を持たない、という方も増えているようだ。したがって、リテール型でCBDCを導入するとした場合に、どのようなユースケースを想定し、どのような仕組みを導入するか、換言すれば、具体的に国民にどのようなメリットがあるか、ということを白地から考える必要があり、時間をかけてしっかりと検討していかなければならない。同時に、各国の動向に目配りすることも重要だ。中国ではデジタル人民元をいくつかの地域で消費者が実際に使う、というパイロット実験を行っている。すでに民間企業によるデジタル決済手段が普及している中で、デジタル人民元はそうした既存の決済手段との差異化が図れるのか、差異化しなければ普及しないのではないか、との意見も見られる。欧州において、ECB(欧州中央銀行)はデジタルユーロ導入に向けて他の先進国と比べれば積極的に検討を進めている。ただ、ECBには特有の事情もある。例えば、統一通貨ユーロを導入しているとはいえ、ユーロは20の独立国家において使用されているものであるため、決済システムが国によって異なっており、これを効率化する、という意義があろう。米国も、調査研究の動きは続いているものの、現時点でCBDCに関しては中立的な姿勢を採っているように窺える。いずれにおいても、通貨や決済の分野では、各国それぞれに日本と異なる歴史や事情を有するため、それらを踏まえて分析する必要がある。日本では、日本銀行が本年4月から技術的な課題・対応策の検討を行うパイロット実験を開始し、政府としても「CBDCに関する有識者会議」(柳川範之座長)を4月に立ち上げるなど、着実に調査研究や検討を進めている。ただ、すでに述べたように、通貨は我々の経済社会活動の基盤であり、国民生活に混乱を招来するようなことは決してあってはならない。政府としては、CBDCに関して丁寧に検討を進めていきたい。新たな通貨を想像し創造する仕事、極めてチャレンジングでクリエイティブである。財務省のみならず、国家の礎、根源にかかわる業務と言えよう。現在、国庫課では、意欲溢れる約40名の職員が働いている。出身は、財務局、国税局、税関、造幣局、国立印刷局、民間企業など様々ではあるが、全員が、国家の存立のために決定的に重要な仕事をしているという自負を有している。本文を読んで、国庫課の業務にご関心を持っていただけたなら幸いである。学生の方であれば、是非財務省の門を叩いていただきたい。国庫課には、大学を卒業してすぐに配属された者もいるなど、非常に若い組織なので、経験のない方でも楽しく仕事ができると思うし、また、その経験は一生の財産になると確信している。一緒にやらないか?(inspired by 神田財務官)おわりに以上、色々な観点から国庫課の仕事を眺め、いずれの視点からも、国庫課が財務省の礎であることがご理解いただけたのではないだろうか。 22 ファイナンス 2023 May
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