ファイナンス 2023年5月号 No.690
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万博記念貨幣(財務省でのデザイン発表には、万博公式キャラクターのミャクミャクも駆けつけた。)いしている。先生は、金属の板を叩いて造形する鍛金がご専門の金属工芸家である。直近では、2025年に大阪で開催される「日本国際博覧会」に向けて、これから3年間、3回にわたって記念貨幣を発行していく計画だ。第一次と第二次は千円銀貨幣、第三次は一万円金貨幣、千円銀貨幣、五百円貨幣の予定。まず4月に第一次のデザインを発表したところである。表面には夢洲(ゆめしま)の万博会場をカラー印刷し、裏面には万博のロゴマークを虹色発色加工(微細な間隔に刻んだ溝を彫ることによって虹色に輝いて見える技術)でデザインしている。第一次の千円銀貨幣の価格は13,800円。お申込みいただいた方の中から抽選で販売しているが、今回は8月8日からお申込みいただけるので、造幣局のホームページを是非チェックしていただきたい。さらには、通貨室は独立行政法人造幣局と独立行政法人国立印刷局を所管している。造幣局は、貨幣の製造に加え、各種勲章・褒章の製造、オリンピックメダルの製造、外国貨幣の製造などを行っている。業務の中心となるのは、我々が使用している貨幣の製造である。新五百円貨幣について記載したように、貨幣には精巧な偽造防止技術が施されている。というのは、富本銭や和同開珎をはじめとして貨幣の歴史は古いが、その歴史は贋金との戦いの歴史とも言えるからである。造幣局も、日々技術を錬磨し、偽造防止技術の深化に全力を注いでいる。世界のどの国も同様の努力をしているが、例えば、かつてイギリスでは人類最高の知性であるアイザック・ニュートンを造幣局に登用した。ニュートンは、貨幣を巡る大きな混乱を鎮めるために改鋳を指揮するとともに、多くの贋金づくりたちを相手に、粘り強く取締りを行っていった。詳細は「ニュートンと贋金づくり」(白揚社)という本に詳しいが、巻措く能わざる名著であるので、ご一読をお勧めする。こうした貨幣の製造が中心ではあるが、造幣局の技術の粋は、機械で大量生産する貨幣のみならず、美麗・荘厳・品格の諸要素を兼ね備えることが要求される一点ものの勲章やメダルなどの金属工芸品においても活かされている。国で言えば、文化勲章や大勲位菊花大綬章、国民栄誉賞の盾などを造幣局は製造しているし、都道府県で言えば、例えば茨城県名誉県民章や山形県名誉県民章などを製造している。また、変わり種として、大相撲大阪場所造幣局理事長杯や、全国高等学校野球選手権大会優勝楯も製造している。金属加工であれば何でもござれ、という感じだ。例えば、大勲位菊花章頸飾は、卓越した技能を持つ職員の手作業による糸鋸作業やヤスリ作業などにより、明治時代から変わらない日本の伝統技法を用いて製造されている。数多くの精緻かつ美麗な部品により構成されることから、製造に1年以上をかけている。こうした製造技術の弛まざる向上によって、国の品格ある叙勲制度の維持に貢献している。先般の東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では、すべての入賞メダルを造幣局が製造したが、そのメダルの側面には、それぞれに実は競技種目名の刻印と金メダルには1つ、銀メダルには2つ、銅メダルには3つの円形のくぼみが施されている。入賞メダルの現物は、造幣局の本局(大阪)及びさいたま支局の造幣博物館でご覧いただくことができる。また、各都道府県において様々な表彰制度が存在するが、「せっかくなので、勲章や金メダルを製造している造幣局にお願いしたい。」という依頼がある。発注者の意向に沿って一からデザインしていくので、その都道府県の特徴を表すとともに、メダルの趣旨もきちんと反映したものが出来上がる。ご関心のある地方自治体の担当者の方は、是非造幣局までお問い合わせ 20 ファイナンス 2023 May

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