売り手から見た場合を「売り現先」、買い手から見た場合を「買い現先」と呼び、売り手は一定期間の資金調達手段、買い手は一定期間の資金運用手段として利用している。からないが、実施されると、外国為替資金特別会計に大きなお金の出し入れが生じる。国庫の資金繰りは、一般会計、特別会計を問わず、トータルで管理しているため、為替介入による影響も含めて、国庫をまわさなければならない。こうした不確定要素が多数ある中で、国庫グループは、・ 支払日の調整が可能な支払いについては、できるだけ大きな受入れのある日(税収の受入日や国債発行日)に合わせてもらうよう、予め各省に依頼し、・ 随時、各省会計課にヒアリングを行い、当面の支払い予定や国債発行計画などを踏まえ、お金の過不足の見通しを立て、・ お金の不足が見込まれる会計に対して、お金の余剰が見込まれる会計から融通するなどの調整を行い、・ それでも全体としてお金が不足することが見込まれる場合には、財務省証券(Treasury Financing Bills。当面のお金が不足する場合など短期の資金繰りを目的として発行される国の債券。)を発行する、という業務を行っている。国庫の資金繰りの観点からの今後の課題は、ここ数年続いているマイナス金利下での資金繰りから、いずれ来るであろうプラス金利下での資金繰りに向けた準備である。マイナス金利下においては有利な運用先がないため資金繰り手段も限られるが、いずれプラス金利となれば、日本銀行との国債買い現先取引(※1)により、一時的に発生する余剰資金で日本銀行が保有する国債等を一定期間購入し、その間の利子に相当する利益を得ることができるなど、各特別会計において、いろいろな短期運用を行うことが可能となり、それを踏まえて国庫の資金繰りも大きく変える必要がある。無論、10年前、20年前はそのような資金繰りを行っていたのだが、その実務に携わっていた人間がどんどん卒業していっているため、知見の継承が課題である。国庫の資金繰りは日々行う必要があり、止めることができない。今後に備えて、様々な資金繰りのやり方をシミュレートし、どのような状況が到来しても万全の対応ができるよう、国庫グループを挙げて取り組んでいる。(※1) 現先取引とは、債券などを一定期間後に一定の価格で買い戻す(売り戻す)ことを、予め約束して売買する取引のこと。国庫グループの目標は「国庫金の効率的かつ正確な管理」である。これは財務省の「政策目標3」としてホームページにも掲げられている。国庫の資金繰りを通じて、国庫金が払底して支払いに支障が生じないようにするとともに、資金調達には金利などのコストを伴うことから国庫に過剰にお金を持たないようにする、ということである。一般会計でも、特別会計でも、それぞれ数多くの事業を行っているが、それを横断的に見つつ、国庫全体としてお金に余剰が生じている場合で、個別の会計でお金が不足するところがあれば、そちらにお金を回すなど、それぞれの時点での全体最適に向けて取り組んでいる。財務省の礎と言うに相応しい業務ではないだろうか。通貨制度を掌るのが通貨室である。我々の社会経済活動の基盤である通貨制度の重要性は、あまりにも自明であるため普段は意識することがないが、これまでも様々な人によって言及されている。曰く、「 夫レ幣制ハ一国財政ノ最モ重要ナル者。」松方正義「 資本主義を破壊する最良の方法は、通貨を堕落させることである。」レーニン「 貨幣は、あらゆるものを、したがって超過や不足をも計量する。…でなければ交易も共同関係もありえないであろう。」アリストテレス「 金のないのは首のないのと同じや。」(これはちょっと違う)通貨室は、通貨の信認の確保という目標の下、日本の通貨を定める「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」や、「貨幣損傷等取締法」、「すき入紙製造取締法」等を所管するとともに、日本銀行券や貨幣の種別の決定・変更(改刷、改鋳)、天皇陛下御即位記念貨幣などの記念貨幣の発行、独立行政法人造幣局、独立行政法人国立印刷局などを掌っている。近年話題なのが、新一万円券への変更などの改刷である。新一万円券の肖像が渋沢栄一、新五千円券が津 18 ファイナンス 2023 May2.通貨室
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