ファイナンス 2023年5月号 No.690
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写真 5 右側が石田健さんすね。また、安全保障など外交関係の理由なども、直ちに公開できない理由としてよくわかる話です。こうした出せない理由についても、しっかりと公表していくことで、「何かやましいことをしているから出せないわけではない」ということを認識してもらうことも重要ではないでしょうか。私が編集長を務めているThe HEADLINEでもセンシティブな情報を扱った記事を公開することもあるのですが、こうしたときには「出す理由」を多角的な観点から丁寧に説明し、記事としました。こうした説明は好評で、出した理由について納得をいただけたと思います。そのため、説明責任をしっかりと果たしたうえで様々な情報を出していくことが一番強い広報だと考えており、こうしたコミュニケーションが政府にもあると一国民としてはエキサイティングだし、納得感にもつながると思います。例えば、財政の例ですと、単に「財政が悪化しています」という資料だけではなく「なぜ財政が悪化し、それに対してどのように対応してきたのか」という歴史的な検証資料を出して貰えると非常にインパクトがあると思います。原田広報室長 最後に、財務省がわかりやすい発信をしていくために必要なことについて、アドバイスをいただければと思います。石田健さん まとめ的な話になりますが、広報を行っていく際には、わかりやすいコンテンツや手段にこだわることなく、多少複雑でも、中の人の声や問題意識から抽出されたものを、ブラックボックスから少しでも出していけると関心を呼ぶと思います。そして、その関心を持ってもらった人やメディアから周囲に広がり、国民の安心感につながるなど広報的な意味でインパクトもあると思います。原田広報室長 個別的な話として、広報を考える際、どこまでわかりやすくすれば伝わるのかという情報の粒度と、正確性や伝える情報量などのトレードオフに悩む時があります。また、その情報がどの程度伝わって、どのような効果を生み出しているのかというインパクトの部分が測れない部分にも悩ましさを感じています。石田健さん 必ずしも広く国民に伝えるという部分やわかりやすさという部分にこだわる必要はなく、影響力がある人に影響を与えるということも重要だと思います。国民に広く遍く伝えることが大事な場面もありますが、そうするとどうしてもメッセージが平たく抽象的な話になってしまいます。例えば、財務省のカウンターパートである金融機関や投資家といった、専門知識がある方々が関心を持つコンテンツを公開できれば、そうした人たちから波及していくという情報拡散が期待できるのではないでしょうか。広報戦略を考えるうえでも、そうした波及効果を想定した発信を考えていくことが重要ですし、むしろこうしたコンテンツの方が財務省の強みを出せるのではないかと思います。原田広報室長 本日はお集まりいただきありがとうございました。国民の目線で見た予算編成や税制改正の見え方や、未来に向けた事後検証ができる体制の構築など広報を起点に様々なお話が聞けました。また次回、違った切り口で財務省に関するお話を聞ければと思います。 14 ファイナンス 2023 Mayおわりに

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