ファイナンス 2023年5月号 No.690
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ファイナンス 2023 May 13写真 4 主計局調査課課長補佐 小川 鉄平兆円がどのように決まったのかという過程のブラックボックスとされている部分について、少しでもロジカルに説明があると納得感や透明性が実感できるのだと思います。予算編成、税制改正のプロセスの話に戻れば、夏に要求・要望があり、間の議論は表に出ず、年末に予算案、税制改正大綱という形で、「今年のグランドデザインはこれです!」と成果物がでます。こうした過程の議論こそ国民が知りたいところで、そこのアカウンタビリティは政府に持ってほしいと個人的には思います。当然、概算要求と予算案を比較すれば差異はわかりますが、その理由に推測が生まれてしまうので、それを避けるためにも、「ここが減ったのはこのような理由です」という説明があるといいのではないでしょうか。小川補佐 日本政府も例えば、行政事業レビューなど量でいえばかなりの情報を出していると思いますが、求められている見え方やフォーマットに合っていないのだと認識しました。石田健さん これは個人的な問題意識として伺いたいのですが、例えば「年金未納」みたいな強烈なメッセージを出して社会的なインパクトを与えてでも、社会を動かし、変化させていく必要があると思いますか。櫻井補佐 個人的には、たとえ社会的な摩擦を伴うような強烈な内容であったとしても発信して、社会全体で議論していくべきだと思います。石田健さん 私もこうした強烈なファクトやメッセージは定期的に出してほしいと思っています。予算編成や税制改正について言えば、その時点で過程がブラックボックスであることは当然理解できます。ただ、数年後でいいので、こういった政策メニューでこのような議論がなされたと公表しておいてもらえれば、メディアも検証ができます。これはメディアの問題であるとも考えていますが、政策の決定過程がブラックボックスであることも、良いか悪いかの二択の規範的な議論や評価しかできない原因になっていると思っています。これが公開されれば、様々な問題について社会的な議論が進むと思っています。小川補佐 おっしゃる通り、物事を決めるその瞬間では出せないものもあるのは事実である一方、事後で公開して検証可能性を保つことは大切ですし、可能だと思います。事後の政策決定プロセスの公開の例を挙げると、今も日本銀行の金融政策決定会合などで10年後に議事録が公開されています。石田健さん 組織の広報の在り方と透明性については表裏一体であると考えています。世間では「テレビが面白くなくなった」という議論がされて、答えは「ネットが出てきたから」と言われていますが自分は違う考えを持っています。具体的には、「ネットでやるような議論がテレビではできなくなったから」ということに尽き、生身の語りと生身のコンテンツに勝るものはなく、そうしたコンテンツが、テレビで生まれづらい要因が大きいのではないでしょうか。そのため、広報のために作るコンテンツも、外向きに作られた情報だけでなく、少しでも生身の情報を盛り込むということを意識すると良いかもしれません。小川補佐 自分の経験でいえば、新しいお札の顔(図柄)を選ぶ政策決定過程は非常に面白い話が多く、当然、偽造防止の観点などから公開できない部分はありますが、オープンに話せることもあるのにお伝えする機会が思いのほかありません。そういった課題はあると思います。石田健さん 出せない部分について、今のお札の話は「偽造防止の観点」という理由がありわかりやすいで財務省の広報について

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