ファイナンス 2023年5月号 No.690
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私達は様々な問題について、どのように対応するか話し合って決めている。社会保障の在り方、財政、環境問題など、その選択の積み重ねが社会を形作り、その影響は、私達だけでなく、将来を生きる人々にも及ぶ。しかし、将来の人々は現在の意思決定に参加することができない。「将来世代の声を、現在の選択に反映する意思決定・合意形成のしくみ」はどうすれば作れるだろうか? それを研究するのがFDだ。もし未来人がタイムマシンに乗って目の前に現れ、私たちがどう行動すればいいか教えてくれたら、将来の失敗が避けられるかもしれない。とはいえ、実際に未来人を連れてくることはできない。そこで私たち自身がタイムスリップしたつもりで「未来人」になり切って、未来の社会はどうなったか、今私たちはどうすれば良いか、現在生きる世代に提言を送ってみる良いのではないだろうか。FDを通して皆さんと考えてみたいテーマは、経済や環境など沢山あるが、今回は少子化をテーマに、より良い社会をつくるためにどうすればいいか、考えてみたい。2065年には人口は約8,800万人に減少し、高齢者が4割を占めると予測されている。一方でこどもの数は減少し、合計特殊出生率は既におよそ1.3程度まで低下している。少子化の進行は、労働供給、経済や市場規模の縮小、地域・社会の担い手の減少、現役世代の負担増加など、結婚やこどもの有無に関わらず社会全体に大きな影響を及ぼす問題。では、2070年にタイムスリップして、未来の社会がどうなっているかを想像してみよう。2023年のいまは環境問題が注目されていますが、1970年にはすでに公害が社会問題化していたはず。また、一般の人も大量消費と廃棄を繰り返す生活をしていたでしょう。二酸化炭素も出し過ぎていたから、今は夏が暑すぎる。日本列島改造政策で日本全国均衡ある発展と地域格差の解消が進められたけど、もっとコンパクトな日本を目指したほうがよかったんじゃないかな。防災を意識した街づくりも必要だった。一生懸命働いて、経済を成長させてくれて、ありがとう。世界における日本の地位が高まったし、豊かで便利な国にしてくれて助かっている。STEP 1FDでは未来へタイムスリップしたつもりで、現在の私たちの行動について提言を送るが、未来人になりきるのは簡単ではない。どんな風に提言をすればよいか、その感覚を掴むため、まずは現在から過去に向けて提言をしてみる。過去50年間で日本や世界はどれくらい変化している1970年への提言か。それを元に「●●してくれたら、良かったのに!」「●●してくれて、ありがとう!」といった提言を考えてみた。1970年から見ると、今の私たちも未来人だ。将来への配慮をして欲しかったという実感を経て、私たちも未来に対する責任があることを改めて気づかされる。主計局調査課課長補佐岡本 めぐみ 氏財務省主計局調査課では、FDの可能性を探るため、ワークショップなどを開催している。令和5年4月13日には、民間企業から6名の参加を得て「少子化」をテーマに開催した。ワークショップの開催に当たって、課長補佐の岡本めぐみ氏から、FDの目的や意義についての説明が行われた。 6 ファイナンス 2023 May2023年から1970年への提言を考える2023年から1970年への提言を考える4月13日、企業から6名が参加4月13日、企業から6名が参加少子化対策をテーマに少子化対策をテーマに「FDワークショップ」を開催「FDワークショップ」を開催

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