ファイナンス 2023年4月号 No.689
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*1) 「新型コロナウイルスが地方公共団体の歳入・歳出に与えた影響―コロナ禍において地方公共団体の収支は悪化したのか?―」 https://www.mof.go.jp/pri/publication/■nancial_review/fr_list8/r149/r149_02.pdf 82 ファイナンス 2023 Apr.3番目のテーマは政治と汚職です。政治の仕組みや汚職は地方自治体の財政運営に影響を及ぼし、時には効率的・効果的な財政運営の障害となります。政治や汚職が自治体の行動にどういう影響を与えるのかを分析することで、効率的・効果的な財政運営に向けて役立つ情報を提供するという視点で執筆しています。4番目のテーマではより幅広い地方自治体活動を取り上げました。例えば、効率的・効果的な財政運営を行うにあたり、一つの地方自治体が単独で頑張る必要はありません。一つの地方自治体だけではできないことについて、他の地方自治体と連携することでどうなるかを調べてみました。加えて、地方自治体が収入を得ながら行っている水道事業や病院事業など公営企業の経営について、どのようにしたら効率的・効果的に行えるのかについても分析し、知見の蓄積を図りました。このように、地方自治体行動で重要と思われる研究の論文を揃えています。三箇山:この4つのテーマというのは、もともと先生ご自身で構想されていたのでしょうか。赤井:他の執筆者の先生方と相談しながら、先ほど述べた4つのテーマにまとめていきました。基本的には各論文の第一著者の先生にお任せしましたが、方向性等についてご不安をお持ちの方がいる場合には私がサポートするようにしました。新川:政策担当者や一般の読者にとって、どういった点に着目すると有益な示唆を得ることができるでしょうか。赤井:細かいところまで理解するというのは難しいのかもしれませんが、各論文の要約やイントロダクションの部分では私たちが伝えたいメッセージを提示しているので、そのあたりを中心に読んでいただけると良いのではと思います。住民は税金を払いつつ地方自治体を監視する立場なので、その地方自治体の財政が本当に効率的・効果的に運営されているのか、その地方自治体の財政は今後も持続可能なのか、将来に向けてどのような取組をしているのかといったところに関心を持つことは、とても重要なことだと思います。そういった関心を持つきっかけになるような情報が、本特集号にはたくさん詰まっていると思います。特に、石川・赤井論文*1は、分析というよりも実態把握をしているので、地方財政にあまり詳しくない方が読んでも面白いのではないかと思います。読むとお分かりいただけますが、日本には約1800の地方自治体があり、新型コロナウイルス感染症への対応で収支が赤字化した地方自治体もあれば、収支が黒字化した地方自治体もあります。更に、収支が改善した地方自治体の中でも計画的に慎重な財政運営を意図して行動していたところがあるなど状況は様々です。この点をどう評価するかは難しいですが、実態を把握するというのはとても重要だと思います。新川:先生は先ほど、地方自治体を監視するのも住民の役割の一つであると仰っていて大事な点だと感じたのですが、他方で地方自治体の財政状況がどうなっているかといったことは、住民にとってはとっつきにくい印象もあるかもしれません。そういった中で住民はどのように関心を持って関わっていくのが良いのでしょうか。

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