ファイナンス 2023年4月号 No.689
85/102

ファイナンス 2023 Apr. 81PRI Open Campus ~財務総研の研究・交流活動紹介~ 182.本特集の見所新川:える上で必要です。地方自治体が少子高齢化に対してどのように行動しているのか、地方自治体の財政は持続可能なのか、地方自治体が将来に向けて持続可能で効率的・効果的な事業を行うために何が必要なのか、そのために国はどういう制度を作れば良いのかといった地方自治体の財政運営の検証が今後の日本ではとても重要だと思っています。ただ、国と地方は対等な関係だとされているので、国が地方に「〇〇をしなさい」と一方的に言うことはなかなか難しいです。そこで、様々な地方自治体がある中で、財政運営があまり上手くいっていない地方自治体に対して、上手くいっている地方自治体をお手本にして自分たちで改革するように国が促すことが重要であり、そのような制度のあり方を考える上で役立つ情報を得られればという問題意識で、今回の特集号を企画・編集しました。三箇山:赤井先生には今回初めてFRの責任編集者の役割を担っていただきましたが、企画・編集にあたり工夫されたことや苦労されたことなどがあれば、教えてください。赤井:今回の特集号には8本の論文を収録していますが、その8本がバラバラではいけないので、それぞれのテーマが有機的に補完し合い、8本が揃うことで地方自治体行動の全体が見えてくる構成にできないかという点は工夫した点でもあり、結構苦労した点でもありました。今回は、大きく災害、財政ガバナンス、政治・汚職、幅広い自治体活動の4つのテーマをベースに、地方財政、地方自治体行動に与える影響を分析されています。各テーマについて、各論文のエッセンス(見所・着眼点)や位置づけを教えていただけますでしょうか。赤井:ご指摘の通り、1つ目のテーマは災害です。新型コロナウイルス感染症のような全国規模の問題や、地震・津波などの自然災害のような突発的な出来事を想定しつつ、国と地方にとって望ましい制度は何かということに主眼を置いています。上記のような突発的な出来事が発生した場合には、国が財政出動などを行い、地方自治体の負担を抑える政策を実施していますが、もっと効率的にできたのではないかと思われることもあります。今後同様の事態においても的確に対応するために、事前準備として制度設計をしていくことが重要であり、そのためにも実際に何が起きたのか事後的に検証して把握することを試みています。2番目のテーマは財政ガバナンスです。地方自治体は自律的に財政運営を行いますが、最後は問題が生じないように国が対応する形になっているので、財政運営が上手くいっていない地方自治体に対してきちんと国がサポートする必要があります。そのためには、各地方自治体の財政運営が上手くいっているか、上手くいっていないかということを国がしっかり把握する必要があり、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」(以下、「健全化法」)の下で地方自治体がどのように行動したのかを研究しています。また、地方公会計制度に関して、地方自治体が自身の財政を見直すきっかけになるような制度作りを促すことについても扱っています。

元のページ  ../index.html#85

このブックを見る