令和4年度職員トップセミナー ファイナンス 2023 Apr. 79講師略歴清家 篤(せいけ あつし)日本赤十字社社長・慶應義塾学事顧問1978年慶應義塾大学経済学部卒業、1980年慶應義塾大学商学部助手、1985年同助教授を経て、1992年より同教授。2007年より商学部長、2009年5月から2017年5月まで慶應義塾長(慶應義塾理事長、慶應義塾大学学長)、2017年慶應義塾学事顧問、2020年慶應義塾大学名誉教授。2018年4月から2022年6月まで日本私立学校振興・共済事業団理事長。2022年7月より現職。政府や学会、国際機関等において社会保障制度改革国民会議会長、日本私立大学連盟会長、日本労務学会会長、ILO仕事の未来世界委員会委員などを歴任。現在、全国社会福祉協議会会長、内閣府経済社会総合研究所名誉所長、労働政策審議会会長、全世代型社会保障構築会議座長などを兼務している。(c)奴雁(d)実学社会保障制度は人生の長い期間にわたって人の生活に影響を与えるものですから、将来時点、例えば少なくとも2040年あたりから逆算してあるべき姿を考えなければならないものでして、そのことを福澤の言葉で表すと「奴雁」となります。雁の群れが一心に餌をついばんでいる時に一羽だけ首を上げて、不意の難に備えて番をする雁がいて、これを「奴雁」と言うそうです。福澤は「学者は国の奴雁なり」と言っております。それはいわゆる「学者」だけでなく、およそ政策を考えるような者は奴雁の役割を果たすべきだという意味だと思います。世の中がその時々のことに夢中になっている時に、過去の歴史を顧み、今の状況をよく分析したうえで将来を予測し、将来のために今何をしなければいけないのかを考える、という役割です。それは熱狂を排して醒めた目で物事を見るということの大切さでもあります。そしてその際の思考のベースになるのが実証分析です。福澤はそれを「実学」といっております。空理空論ではなくて、実証に基づいた学問によって長期的な視野に立ってより大切なものは何かを示し、それを最終的には国民の判断で決めていきましょう、ということ。社会保障制度改革においては大切なのはこれではないでしょうか。ご清聴ありがとうございました。(以上)
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