令和4年度職員トップセミナー ファイナンス 2023 Apr. 754. 2040年に向けての最大の課題は労働力(2)アンバランスな給付(3)負担増だけで凌げるか(1)大幅な労働人口減ていくことも予想されるわけですけれども、少なくとも2040年あたりまで考えるとかなり厳しい状況となると思います。ただ、社会保障給付は全体として伸びると言っても、必ずしも一様ではありません。まずあらためて指摘しておきたいのは子育て支援にかかわる給付がいずれにしてもとても少ないということです。GDP比で2018年度でも子育て支援の給付は1.4%程度、2040年度でも、これから改革が進めばもっと増えるかもしれませんが、1.7%程度にとどまっております。これに対して、年金、医療、介護といういわゆる高齢3経費は圧倒的に多いわけです。同時に年金、医療、介護の間でも伸び方は大きく異なります。つまり、年金と医療・介護は全く別だということです。年金は確かに名目額では増えますが、対GDP比でみると2018年度に10.1%だったのが、マクロ経済スライドがきちんと機能すれば、2040年度には9.3%と、微減すると予測されています。これに対して医療・介護はずっと増えていきまして、医療はGDP比で2018年度の7%ほどから2040年度には8.7%に、介護に至っては2018年度の1.9%から3.3%へと大きく増えていくわけです。これは75歳以上という有病率、要介護率の高い人たちの比重増加、それから医療については質の高い、より良い薬や医療機器が開発されるということで、これは良いことではありますけれども質の向上によっても医療費は高くなっていくことは避けられません。人口が減っていく中で、こうした社会保障給付の増加をどのようにファイナンスしていくのかが問題になってくるわけです。もちろん人口が減っても税率や社会保険料率を引き上げるという形で財源を確保することは可能なわけですけれども、それらをあまり高めていけば、支え手となる人たちの生活水準が低下してしまうので、これには限度があるわけです。そのように考えると、人口が減っていく中で、できるだけ社会保障制度を支える支え手の労働力を確保していくことが重要になってくるわけです。人口が減っても支え手は減らないような工夫を可能な限りしていくことで、社会保障の持続可能性を高めていくということです。厚生労働省雇用政策研究会推計の労働力人口の見通しによると、これから労働力人口を増やす手立てを何も講じない場合、今の労働力参加率を前提にすると、2017年には6,720万人いた労働力人口は、2040年には5,460万人へ、すなわち5,500万人を割り込んでしまうところまで減ってしまうことになります。労働力人口が減ると、一つには生産が減る可能性があります。国内の生産=国内でモノやサービスを生産する労働者の数×労働者一人当たりの労働時間×労働時間1時間当たりの付加価値生産性と定義されますが、労働時間はもう増やせない、むしろもっと減らしていかなければいけない。そうなると、労働力人口が減る分を埋め合わせるだけ時間当たりの付加価値生産性を相当に引き上げない限り生産が減ってしまう、つまりマクロ経済の供給面で成長が制約されることになります。もう一つは労働者の数が減ると、一人当たりの賃金がそれを埋め合わせるだけ上昇しない限り、雇用者所得の総額も減っていく。それに伴って消費性向が変わらなければ消費の総額も減っていく。すなわちマクロ経済の需要面でも成長が制約されることになるのです。そして社会保障制度の中核をなしている社会保険、特に被用者保険については、働いている人とその雇い主が折半して社会保険料を負担しているわけですから、労働者の数が減ると、保険料率一定なら社会保障の財源も細ってしまうことになります。「2025年問題」は、消費税を10%に引き上げ、それを前提として改革を進めていくことによって何とか乗り切れるかもしれません。しかし「2040年問題」は今申し上げたような労働力人口の減少を前提とすると、社会保障制度を財源面で持続させることは難しくなります。さらにそれは医療や介護のサービスの提供
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