ファイナンス 2023年4月号 No.689
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図 社会保障給付費の将来見通し(資料出所:厚生労働省)3.2040年問題に向けて 74 ファイナンス 2023 Apr.(c)医療・介護医療財源○提供体制△(4)当面の課題(1)社会保障給付の増加で導入されましたが、これをデフレ下においても実施されるようにすることを提言いたしました。それから医療と介護を一体と考えて、医療・介護の提供体制の改革として、いわゆる病院完結型の医療から地域完結型の医療に転換していくという提言をしております。特に医療保険制度について、国民健康保険の保険者を従来の市町村から、病床をコントロールする権限を持っている都道府県に変更することとし、これによって都道府県に医療提供体制改革の主役を担ってもらうこととしました。それから、医療費の財源については、保険料の総報酬割、すなわち被用者保険の保険料の算出に当たっていわゆる総報酬に対して保険料を課すことに改めるという提言をいたしました。これらの提言の実現具合を、まだ進行中のものもありますが、振り返ってみます。年金については基礎年金の財源の2分の1公費負担は実現しましたし、まだ必ずしも十分ではないですが、マクロ経済スライドもきちんと実行されるようになってきたことから、年金についての提言はかなり実現したのではないかと思います。子育て支援については、待機児童ゼロであるとか幼児教育無償化といった点ではかなり進んだと思います。一方で少子化対策という観点からはどうだったかというと、もともと目標が当時の希望出生率1.8を回復するというところにあったわけですが、そこには全然届いておりませんし、むしろこの3年ほどのパンデミックの影響で出生率が低下してしまっていることもあり、少子化対策は残念ながらまだ十分に結果をだしておらず、これからの最大の緊急課題として進めていかなければいけないと思います。医療の財源については、保険料の総報酬割は実現し、また高齢者医療の窓口負担の引き上げも菅政権の下で一昨年にある程度前進しました。医療の提供体制について、病院中心型の医療から地域中心型の医療への転換はまだ道半ばです。むしろこの3年ほどの間にそれの進んでいないことによる問題もずいぶん顕在化してしまったというようなこともありました。当面の課題、つまり「2025年問題」に対する当面の課題としては、少子化対策をさらに進めることと医療・介護の提供体制改革をさらに進めていく、特に地域包括ケアの実現をしっかりと図っていくということです。子育て支援、少子化対策はこの10年ぐらいが最後のチャンスであると考えて取り組む必要があると思います。この3年ほどの間に問題の顕在化した医療・介護の提供体制の見直しについても、しっかりと進めていかなければならないと思います。次に「2040年問題」への対応です。2040年には先ほども申し上げたように、これからの75歳以上の人口比率の増加もあり、社会保障給付は大幅に増えていくと見込まれております。この図はしばらく前の厚生労働省の推計です。社会保障給付の名目値が記載されておりますが、社会保障給付を考える場合、実質で考えるべきなので、対GDP比で見ると2018年度には21.5%と、GDPの5分の1強だったものが、2040年度には対GDP比24%と、GDPの4分の1弱にまで増えていくと予測されています。2040年度以降は高齢者の絶対数そのものが次第に減っていきますので、その増加はよりマイルドになっ(3) 年金◎、子育て支援○少子化対策△、

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