令和4年度職員トップセミナー ファイナンス 2023 Apr. 732.2025年問題に向けて(a)少子化対策、子育て支援(b)年金(1)社会保障と税の一体改革(2)「社会保障制度改革国民会議」報告担当しました。このときおそらく初めて具体的に社会保障の問題を給付と負担の両面から考えていく、という考え方をするようになったと思います。2011年に民主党菅直人内閣の下で「社会保障改革に関する集中検討会議」が開かれて、与謝野馨大臣が社会保障・税一体改革大臣としてこの会議を主宰されました。社会保障に関する改革を政治家の責任で議論しようとした会議だったようにも思います。そしてこの会議のいわば延長線上にできたのが、野田内閣の下で2012年につくられた「社会保障制度改革国民会議」だったと思います。いわゆる三党合意、すなわち当時の民主党、自民党、公明党の三党での社会保障と税の一体改革に関する合意(2012年6月)を受けて立ち上がったものです。のちに政権が交代して安倍内閣になってから2013年8月に提言を提出しました。私はこの会議の会長を仰せつかっておりました。そのあと安倍内閣の下でこの「社会保障制度改革国民会議」の提言をもとにした改革が社会保障制度改革プログラム法として次々と実現していくことになりました。このプログラム法に基づく改革をモニタリングするという意味もあって、2014年に「社会保障制度改革推進会議」が安倍内閣の下で設けられました。2019年には安倍内閣の下で「全世代型社会保障検討会議」が立ち上がり、これが菅内閣にも引き継がれていきました。「全世代型」という用語は、先程申し上げた「社会保障制度改革国民会議」の中で提起された概念でもあります。そして2021年の秋に「全世代型社会保障構築会議」が岸田内閣の下で立ち上がり、2022年の暮れに報告書が提出されたところです。私はこの「全世代型社会保障構築会議」の座長を仰せつかった時に改めて今世紀に入ってからの社会保障改革に関する会議体の議論をあらためて復習してみたのですけれども、実はその前に一つ大切な提言をまとめた報告書がありました。1995年に社会保障制度審議会の発表した平成7年勧告です。タイトルは「安心して暮らせる21世紀社会を目指して」でした。21世紀に入ってからあらゆる会議で検討された項目が、その中ですでに、ほぼ網羅されているとも言える、とても先見性に富んだ報告書だったと思います。先ほど申し上げた「2025年問題」に対処するための社会保障制度改革を進めようとしたのがいわゆる三党合意に基づく「社会保障と税の一体改革」だったわけです。これは以下の点から、画期的なことであったと思います。一つは消費税を上げるという形で明確に給付と負担を一体で考えたこと、もう一つは将来世代の負担を出来るだけ穏やかなものにするために、消費税増税分も約半分は将来世代の負担を軽減するために使おうという将来世代への配慮を強く示したこと、そしてもう一つが、社会保障制度については、責任ある政党間ではそれを政争の具にはしないで、持続可能で国民の生活をしっかり守れるような建設的な改革を行っていく、という政治合意がなされたこと、です。こうした流れの中で「社会保障制度改革国民会議」では議論を行って、提言をまとめました。この報告のいくつかのポイントを申し上げます。「社会保障制度改革国民会議」は社会保障制度の年金・医療・介護・子育て支援(当時の言葉では少子化対策)の4つの分野について検討するというミッションを与えられていましたが、報告書ではあえて「少子化対策、子育て支援が社会保障制度改革の一丁目一番地である」と書きました。そのために消費税の増税分のうち少なくとも0.7兆円を少子化対策、子育て支援の充実のために充当し、さらにこのほか0.3兆円について別途財源を確保して、合計1兆円規模で少子化対策の充実を図る、という提言をしました。年金については、基礎年金の2分の1を公費負担にするということ、これは以前からそのようにすべしと言われていたことですが、ここは消費税増税分を使って賄うことを提言いたしました。もう一つはマクロ経済スライド制が2004年の改革
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