ファイナンス 2023年4月号 No.689
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864202013201620102007200420011998199519891992198619832022201620142012201020082006200420182020<医薬品(ヘルスケア)>2002201720202014201120082005200219991996199019931987198420202022201820162014200820062004200220102012米国(S&P500)202220142016日本(TOPIX)20202018201220102008200420062002対初値21年上場(125社)(注)2010~19年は上場1年後の株価、20・21年対公開価格対初値20年上場(91社)対公開価格対初値対公開価格(図表6)国内スタートアップのダウンラウンドの事例(図表2)設備投資の国際比較(対GDP比)(図表7)上場後の株価の変動(%)4030201020191980(図表3)研究開発の国際比較(対GDP比)日本(%)3.02.52.01.51.01981391▲86.8%477▲66.0%285▲64.8%199▲55.6%2010~19年上場▲47.9%(676社)(図表4)M&A金額の国際比較(対GDP比)(図表8)M&Aによる効果(図表5)事業会社によるスタート 4003503002502001501005002000(出典)Bloomberg、WorldBank、経済産業省「民間企業のイノベーションを巡る現状」、JPEA「日本におけるプライベート・エクイティ市場の概観」、文部科学省科学技術・(出典)三菱総合研究所「大企業とベンチャー企業の経営統合の在り方に係る調査研究」(平成30年度経済産業省委託調査)、豊福康友「直近のスタートアップの事業環境を踏まえた日本における「事業創造」の取り組みについて」、日本経済新聞「壊れてしまったマザーズ「過小値付け」に投資家が反乱」、YojiroItoandDaisukeMiyakawa,2022,PerformanceofExitingFirmsinJapan-AnEmpiricalAnalysisUsingExitModeData(億ドル)5004003002001000(2000年=100)・日本と米国の株価を比較すると、日本企業の株価の上昇は緩やかに留まる。産業構造の違いによるところも大きいと考えられるが、例えば、情報通信や医薬品といった個別の業種で比較しても日米の株価上昇率には大きな開きが確認できる(図表1)。・成長に向けた取組みとして、設備投資および研究開発の規模は、対GDP比でみると日本が米国に劣後する訳ではないが(図表2、3)、M&Aの金額においては大きな差がある(図表4)。技術やネットワーク等を既に有している既存企業を取り込むことによって「時間を買う」ことが可能なM&Aにより、一部の米国企業は急速な成長を実現していると考えられる。今後、成長を志向する日本企業においては、同様にM&Aの積極的な活用が必要不可欠となるであろう。(図表1)日米の株価推移・スタートアップはイノベーションの担い手として期待されているが、既存企業の成長の加速を考える際にも、スタートアップへの投資およびM&Aが重要になるだろう。諸外国と比較して、日本のスタートアップに対する投資の金額は小さく、拡大の余地は大きいと考えられる(図表5)。・一方で、日本のスタートアップ企業においては、前回の資金調達時よりも低い株価で株式を発行する「ダウンラウンド」の例が目立ち(図表6)、継続的な資金調達が困難になっているとの指摘もある。また、上場後においても、IPO(新規株式公開)から1年が経つと公開価格や初値からマイナスになっている銘柄の方が多く、その状況は増加傾向にある(図表7)。この状況の下では、スタートアップ企業が経済の成長を牽引することは期待しにくいであろう。・M&Aには、スタートアップ企業が保有する経営資源を、経済全体でさらに有効に活用する可能性を拡大させるという意味がある。実際に、M&Aを実施した国内企業においては、その後の生産性成長率が上昇し、経済全体の生産性上昇率も高まったという分析結果も存在する(図表8)。以降は、M&Aの促進にあたっての取組みを検討したい。アップ投資額の国際比較4021159015日本米国中国欧州(注)各国の2020年度の事業会社によ<全体>学術政策研究所「科学技術指標2022」るスタートアップ投資額。(2000年=100)50040030020010002000(2000年=100)40030020010002000企業名直近ラウンド評価額(年月)298億円(18/9)337.9億円note(22/5)INFORICH238.9億円(21/11)50.8億円(22/2)171.3億円(21/2)87.3億円(22/2)IPO想定時価総額(22年12月時点)下落率30.1億円▲89.9%ELEMENTS44.5億円81.3億円SUMASAPO17.9億円SmartDrive76.1億円toridori45.5億円(注)JPX、INITIALのデータ。<情報・通信業(情報技術)>(%)100806040200は22年2月7日終値と比較。マイナスプラス(%pt)0.60.50.40.30.20.10.0-0.1-0.2(%)米国日本12102%米国日本米国英国フランスドイツ韓国(注)日本は2014-2020の平均、他国は2014-2018の平均で算出。1524423767110884910%9%5%5%3%10-1408-1004-0814-18M&Aされたことによる生産性成長率への影響M&Aしたことによる生産性成長率への影響M&Aによる生産性成長率への影響コラム 経済トレンド財務事務官 知田 直樹106 66 ファイナンス 2023 Apr.スタートアップM&Aの意義本稿では、国内事業会社の成長に向けたM&A促進の重要性について考察を行う。M&Aの必要性M&Aを通じた日本企業の成長について大臣官房総合政策課 調査員 岡 昂一郎/山口 晶子

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