〓*37*38*39*40*41*42図表9 旧安定化法による資本増強措置の枠組み(出所)会計検査院資料*41旧安定化法早期健全化法日本銀行金融機関等政 府債務保証借入れ預金保険機構(金融危機管理勘定)株式会社整理回収銀行金 融 機 関貸付け利益納付・損失補てん優先株式、劣後債、劣後ローンの引受け等金融危機管理審査委員会「経営の健全性の確保のための計画」の提出*37) 中曽(2022)は、「破綻処理財源の17兆円は預金保険機構に設置された『特例業務勘定』で経理され、内訳として7兆円が交付国債で、10兆円が同勘定の政府保証借入枠として計上された。一方、資本注入財源として用意された13兆円については、新たに預金保険機構に設置された『金融危機管理勘定』で経理され、3兆円が交付国債、残りの10兆円が同勘定の政府保証借入枠という形で計上された」(p.94-95)と整理しています。ここでは中曽(2022)を引用しましたが、柳澤(2021)も参照してください。*38) 中曽(2022)のp.94を参照。*39) 当時の公的資金注入は申請主義であり、銀行は公的資金注入が不名誉(スティグマ)になりえることから、申請が困難でした。柳澤(2021)は当時、最も傷が浅いとされていた三菱東京銀行が声を上げ、主要行は皆受け入れるのが良いという形で注入がなされたとしています。柳澤(2021)のp.129-130を参照してください。*40) 中曽(2022)のp.95を参照。*41) https://report.jbaudit.go.jp/org/h15/2003-h15-0752-0.htm*42) 中曽(2022)のp.113を参照。なお、区分経理については、「損失補填に割り当てられた17兆円は以前から存在した『特例業務勘定』で経理され、このうち7兆円の交付国債もそのまま残った。残りの10兆円が政府保証枠の形態となった。国有化銀行などを処理する18兆円は、預金保険機構に新たに設置された『金融再生勘定』で経理され、全額が政府保証枠だった。資本注入財源の25兆円は、同様に新たに設置された『金融機能早期健全化勘定』において経理され、やはり全額政府保証枠だった」(p.113)としています。1998年に旧安定化法が成立し、金融システムの安定化のため、2001年3月までの時限措置として30兆円(うち、17兆円が金融機関の破綻処理財源、13兆円が金融機関に対する資本注入の財源*37)の資金が用意されました*38。これに伴い、政府は大手行に対して、1.8兆円の公的資金を注入しました*39。公的資金注入のため、預金保険機構の勘定として「金融危機管理勘定」と破綻処理のための「特例業務勘定」という二つの時限的な勘定が作られました*40。本稿では、2003年に公的資金注入を受ける以前に、りそな銀行に対しては既に公的資金注入がなされていたと指摘しましたが、りそな銀行の前身の大和銀行とあさひ銀行に対しては、このタイミングで公的資金注入がなされました(そのスキームが図表9の通りです)。まず、金融機関は公的資金注入を受けるにあたり、「経営の健全性の確保のための計画」を金融危機管理審査委員会へ提出します。金融危機管理審査委員会とは、「公的資金の注入を決定する主体」であり、同委員会は、大蔵大臣、日銀総裁、預金保険機構理事長、3名の民間委員(国会承認人事)で構成されています(佐々波氏が委員長になったため、佐々波委員会と呼ばれます)。公的資金の注入に際しては、公的資金が必要な銀行が申請し、同委員会で承認します。その後、預金保険機構は、政府保証で資金を調達し、整理回収機構に資金を貸し付けます。公的資金を申請した金融機関は、劣後債や劣後ローンなどの形で、整理回収機構から資金提供を受けます。図表5の(4)には旧安定化法として大和銀行とあさひ銀行にそれぞれ劣後ローンが1,000億円と記載されていますが、この公的資金はこのようなスキームで注入がなされました。旧安定化法は1回目の公的資金注入のスキームでしたが、もともと注入金額も少なく(各行1,000億円で横並び)、劣後債権であったことから資本性が市場で評価されなかったことなど、その対応が不十分であったことから、1998年10月に早期健全化法が成立し、2回目の公的資金注入のスキームが生まれました。前述のとおり、旧安定化法は30兆円の枠組みでしたが、早期健全化法の成立に伴い、その規模は2倍の60兆円に引き上げられました(そのうち、17兆円が破綻処理の損失の穴埋め、18兆円が国有化の処理、25兆円が資金注入に割り当てられています*42)。そのスキームを示したものが図表10ですが、まず、該当金融機関は「経営健全化計画」を、政府 58 ファイナンス 2023 Apr.BOX 大和銀行、あさひ銀行、近畿大阪銀行に対する 公的資金注入
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