2022202120202019201820172016201520142013201220112010200920082007200620052004(出所)Bloomberg20032002 *35) りそなHDの返済計画についてはりそなHDの下記のサイトで、完済に至るまでの返済実績を詳細に開示しています。 *36) 例えば、中野(2016)は「リーマン・ショックによって銀行業の株価が全般的に急落し、りそなHDもその例に漏れなかった。この結果、公的資金投入単価を上回る価格での優先株式の第三者への譲渡あるいは普通株式への転換・譲渡という公的資金返済への道が閉ざされた」と指摘しています。我が国における公的資金注入および一時国有化スキーム ファイナンス 2023 Apr. 57図表8 りそなHDの株価の推移(円)3,5003,0002,5002,0001,5001,00050002001*32) 日本経済新聞(2010/11/6)「りそな、公的資金9000億円返済へ 公募増資6000億円発表」では「細谷英二会長は『現在のように(普通株式に転換される可能性のある)大量の優先株を抱えたままでは投資家がりそな株を買いづらい』と指摘。「普通株式中心のわかりやすい資本構成に変える」ことで低迷が続く株価の引き上げを目指す方針を示した」としています。*33) https://www.dic.go.jp/katsudo/page_001226.html*34) この際、その他資本剰余金勘定を財源にした点が特徴ですが、「その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主の会計処理」については下記を参照してください。https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/haitou.pdfhttps://www.resona-gr.co.jp/holdings/investors/faq/capital.htmlとしています*32。図表7をみると、2011年に預金保険機構が保有する優先株式が大幅に減っていることがわかります。この際、りそなHDは6,000億円の株式を発行して資金調達し、それまで積み上げてきた利益と共に、優先株式を購入することで大幅に公的資金を返済しています。早期健全化法優先株式(2本分)については、特別優先配当により、640億円の返済をしている点も特徴です(早期健全化法についてはBOXを参照してください)*33。これはあおぞら銀行による返済の事例を参照としたものと解されますが、この特別優先配当により、当該優先株式の帳簿価額を1,600億円から960億円に低下させるとともに*34、2015年6月に2本まとめて、処分価額960億円で、自己株式取得(売買)で買い戻して、これで最大おおよそ3兆円あった公的資金を完済しています。ちなみに、公的資金にかかる優先株式等については、その処分に際して、適正な価格を決定するうえで、学識経験者による処分価格審査会を経ることになっています(詳細は預金保険機構によるディスクロージャー誌などを参照してください)。このように、りそなHDへの公的資金はリストラ等により収益の増強を図るとともに、適時増資することで返済がなされたと解釈できます*35。このようにしてみると、りそな銀行による公的資金返済は順調に思われる読者もいるかもしれません。もっとも、りそな銀行の返済の道のりが困難であったという声も少なくありません。例えば、預金保険機構がりそなの株式を購入して損失を計上せずに売却するには、直感的には購入した時の単価を、売却時の単価が上回る必要があります。しかし、図表8を見てわかるとおり、りそなHDの株価は2005年以降、低下傾向にあり、当初の単価を上回る形で優先株式を購入して返済することは困難でした*36。なお、りそな銀行の事例では、株価がゼロにならなかったため、株主責任がとられなかったという議論がなされることが少なくありません。もっとも、前述の通り、普通株式及び優先株式の増資により、既存の普通株主は相応の規模の希薄化を受けており、株価がゼロにならなければ株主責任を問わないという考え方に異論もあります。りそな銀行のケースでは、議決権については、無配により株主総会の議決権が復活した早期健全化法優先株式も含めて7割以上の議決権を取得しましたし、株式配当については、普通株式は2006年3月期、優先株式については2005年3月期になるまで無配でした。
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