*28) 日本経済新聞(2003/12/09)「金融庁、公的資金新制度の資金枠、2兆円で調整」などを参照。*29) なお、株式交換は当初から予定されていたとされています。我が国における公的資金注入および一時国有化スキーム (出所)りそな銀行*27ファイナンス 2023 Apr. 55(2)議決権付優先株式(預金保険法)名称配当金(年間)配当利回り1年円LIBOR議決権(3)優先株式(早期健全化法)名称及び名称(4)劣後特約付借入(金融機能安定化法・早期健全化法)1,000億円1,000億円1,000億円金額利率償還日コール条項当初借入会社大和銀行金融機能 安定化法根拠法※ りそな銀行の発行価額を株式交換比率で除して算出される1株当たりの価額を記載(以下同じ)図表5 りそな銀行への公的資金の注入:普通株式と優先株式の概要(1)普通株式(預金保険法)普通株式発行総額2,964億円発行株式数5,700百万株発行価額種類52円 ※*22) この優先株式は、乙種第一回優先株式(4,080億円、大和銀行発行)、丙種第一回優先株式(600億円、近畿大阪銀行発行)、戊種第一回優先株式(3,000億円、あさひ銀行発行)、己種第一回優先株式(1,000億円、あさひ銀行発行)で構成されます。*23) 金融機能安定化法による劣後ローンを大和銀行とあさひ銀行がそれぞれ1,000億円、早期健全化法による劣後ローンをあさひ銀行が1,000億円借り入れをしています。*24) りそなHD・りそな銀行(2003)によれば、優先株式については、「株式移転または株式交換により、りそなホールディングスが発行する下記の優先株式」(p.33)、劣後ローン(劣後特約付借入)については、「債権者をりそなホールディングスに変更することによって、公的資金として導入している優先株式および劣後債務の償還・利払いのための財源を、りそなホールディングスにおいて統一的に管理する体制」(p.34)としました。*25) 中野(2013)は、「投入された公的資金が経営規模に比較して巨額であったということである。既述したとおり公的資金返済の原資となるりそなHDの税引前当期純利益は単年度で2千億円前後であり、単純計算でも公的資金の全額返済までに15年程度を要する額が投入されていた。」(p.110)と指摘しています。*26) 我が国における転換社債の利率は典型的にはゼロ%ですが、転換社債の保有者は利率がゼロ%の代わりに価格が上がったら株式に転換できるオプションを有しています。*27) ここの資料は、りそなホールディングス・銀行銀行「『経営の健全化のための計画』の概要」を参照しています。詳細は下記を参照してください。なお、52円は、株式併合・分割の結果、現状の520円に相当します。https://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/f-20040916-2/siryou/473-482.pdf第1種第一回第2種第一回優先株式優先株式発行総額5,500億円5,636億円5,500億円発行株式数2,750百万株2,818百万株2,750百万株発行価額優先株式200円変動200円変動1年円LIBOR+0.5%無制限+0.5%無制限乙種第一回優先株式4,080億円丙種第一回優先株式600億円500円6円80銭1.36%600円配当金(年間)6円36銭1.06%配当利回り大和銀行 当初発行会社 乙種第一回 優先株式近畿大阪銀行 第一回 優先株式当初 当初 LIBOR+2.7% 20/7月以降 LIBOR+3.95%LIBOR+1.0% 15/4月以降 LIBOR+2.5%永久永久平成15年 3月30日以降第3種第一回200円変動1年円LIBOR+0.5%無制限己種第一回戌種第一回優先株式優先株式3,000億円1,000億円発行総額発行株式数680百万株120百万株240百万株80百万株1,250円発行価額1,250円14円38銭18円50銭1.15%1.48%あさひ銀行 第1回第2種 あさひ銀行 第2回第2種 優先株式優先株式当初 LIBOR+1.04% 21/4月以降 LIBOR+2.54%永久平成21年 平成15年 4月1日以降3月31日以降あさひ銀行あさひ銀行金融機能 安定化法早期健全化法銀行であり、これらの銀行に対し、すでに優先株式*22として合計8,680億円、劣後ローンとして3,000億円*23が公的資金として注入されていました(この詳細はBOXを参照してください)。この部分の返済も当然求められるため、預金保険法102条スキームによる公的資金注入後、公的資金の残高は合計3兆1,280億円となりました*24。この3兆円という数字は、2000年代のりそなホールディングス(HD)の利益が2000億円前後であったことを考えると、その規模は巨額であることが分かります*25。図表5は公的資金注入のために発行された普通株式と優先株式の概要になります。優先株式というと議決権が制限される代わりに配当が高いという設計が典型的ですが、りそな銀行が公的資金注入に際して発行した優先株式については、配当率が低く抑えられている点が特徴です。これは再建期間におけるキャッシュアウトを防ぐことが一因と考えられますが、配当が低い代わりに、普通株式への転換権に加え、満期は永久、かつ、普通株式と同等の議決権が付与されています。本来は、優先株式としてその信用力に見合った高い配当率が求められるところ、株価が値上がりすればキャピタルゲインが獲得できる転換権を付与することで、その見合いとして、配当率が低く抑えられた設計となっています(この観点では転換社債と一定の類似性を有するとも解釈できます*26)。*27なお、公的資金は、2003年6月に、預金保険機構がりそな銀行の株式を購入するという形で注入されていますが*28、2003年8月にりそな銀行とりそなHDの株式交換を経て、りそなHDに対して公的資金注入がなされる形がとられます(そのため、本稿では公的資金注入のタイミングではりそな銀行、その後の流れについてはりそなHDと整理した書きぶりになっています)*29。ちなみに、大和銀行、近畿大阪銀行、奈良銀行という3行が合併する中で、2001年に大和銀HDが設立され、2002年にあさひ銀行が経営統合する中で、その名称が変わり、りそなHDとなりました(次回取
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