ファイナンス 2023年4月号 No.689
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■ 図表5:令和9年度に向けて新たに必要となる防衛費をまかなう財源新たな国家安全保障戦略等の策定と令和5年度防衛関係予算について ファイナンス 2023 Apr. 37*3) 令和4年12月23日に閣議決定された政府の令和5年度税制改正大綱においては、前述の与党税制改正大綱と同様の内容が盛り込まれた。(2)防衛財源の確保(3)建設公債の発行対象図表5:令和9年度に向けて新たに必要となる防衛費をまかなう財源税制措置決算剰余金の活用防衛力強化資金(税外収入)歳出改革様々な工夫をしても不足する4分の1(毎年度約1兆円強)個人・法人への影響に最大限配慮実施時期は引き続き検討国民負担を抑えるため、様々な工夫必要な財源の4分の3(毎年度約3兆円)を確保前述のとおり、整備計画においては、防衛力整備の一層の効率化・合理化の徹底等の取組を通じて実質的な財源確保を図ることとしているところ、令和5年度においては、重要度の低下した装備品の運用停止や、長期契約の活用、原価の精査等による調達の最適化などを図ることにより、▲2,572億円の縮減効果を実現している。抜本的に強化される防衛力は、将来に亘って維持・強化していかねばならず、これを安定的に支えるためには、しっかりとした財源を確保することが不可欠である。即ち、令和9年度の整備計画対象経費を8.9兆円としている中、令和4年度の同経費5.2兆円との差額である約4兆円に対して、裏付けとなるしっかりとした財源が毎年度必要となる。その財源確保に当たっては、国民のご負担をできるだけ抑えるため、あらゆる工夫を検討した結果、(1)歳出改革、(2)決算剰余金の活用、そして、(3)様々な取組により確保した税外収入等を防衛力整備に計画的・安定的に充てるための新たな資金制度「防衛力強化資金」の創設により、必要な財源の約4分の3を確保することとしている。それでも足りない約4分の1については、総理から、「将来世代に先送りすることなく、令和9年度に向けて、今を生きる我々の将来世代への責任として対応すべきもの」として、「税制措置での協力をお願いしたい」旨表明された*3。(図表5:令和9年度に向けて新たに必要となる防衛費をまかなう財源)その上で、令和4年度の中期防対象経費(5.2兆円)から令和5年度の整備計画対象経費(6.6兆円)への増額(1.4兆円程度)の財源については、歳出改革(0.2兆円程度)と税外収入(1.2兆円程度)により確保している。また、令和5年度に防衛力強化のための財源として確保した税外収入の総額は4.6兆円程度であり、このうち、前述の1.2兆円程度を超える分(3.4兆円程度)は防衛力強化資金に繰り入れ、令和6年度以降の財源として活用することとしている。(図表6:令和5年度予算における防衛力強化のための対応に係る税外収入(全体像))財政法において、国の歳出は租税等によって賄うという、いわゆる「非募債主義」を定めつつ、公共事業費等の財源に限って公債(建設公債)の発行を認めている。建設公債の発行が開始された昭和40年代は、財源不足が限定的であったため、公債発行は建設公債にとどまり、かつ、その発行対象も制限的に対応していた。昭和41年には、福田大蔵大臣(当時)が、防衛費は消耗的な性格を持ち、建設公債発行の対象としない旨の答弁をしていた。他方、昭和40年代後半以降、公債発行対象経費の範囲は徐々に拡大し、また、昭和50年度以降、財政状況の悪化に伴い、一般会計の歳入不足を補うため、

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