34 ファイナンス 2023 Apr.(2)安保戦略のポイント(3)防衛戦略のポイント(4)整備計画のポイント財政面から見て、安保戦略の最大のポイントは、「2027年度において、防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組をあわせ、そのための予算水準が現在の国内総生産(GDP)の2%に達するよう、所要の措置を講ずる」と決定したことである。これは、数字ありきではなく、安全保障環境が一層厳しさを増す中、必要とされる防衛力の内容を積み上げた上で、同盟国・同志国等との連携を踏まえ、国際比較のための指標も考慮し、我が国自身の判断として導き出された。具体的には、「三文書」の検討の中で、整備計画の対象となる経費に加え、安保戦略において総合的な防衛体制を強化するための取組とした、(1)研究開発、(2)公共インフラ、(3)サイバー安全保障、(4)我が国及び同志国の抑止力の向上等のための国際協力の四つの分野を、防衛力の抜本的強化を補完する取組の中核をなすものとして新たに位置づけることとなった。その上で、歴代の政権で、これまでNATO定義を参考にしつつ、安全保障に関連する経費として仮に試算してきた際に含めてきたSACO・米軍再編関係経費、海上保安庁予算、PKO関連経費等に加え、四つの分野に関する経費についても、「補完する取組」として計上されることとなった。また、経済財政基盤の強化についても触れられ、「我が国の経済は海外依存度が高いことから、有事の際の資源や防衛装備品等の確保に伴う財政需要の大幅な拡大に対応するため、国際的な市場の信認を維持し、必要な資金を調達する財政余力が極めて重要であり、わが国の安全保障の礎である経済・金融・財政の基盤強化に不断に取り組む」ことを示した。有事であっても日本の信用や国民生活が損なわれないようにし、平時から財政余力を維持・強化しておくことは不可欠であり、安保戦略では、初めて、安全保障の観点からの経済・金融・財政に関する政府としての方針を示すことになった。防衛戦略においては、防衛力の抜本的強化を、「我が国への侵攻を我が国が主たる責任をもって阻止・排除し得る能力」を持つこととし、そのために重視する能力として以下の7分野を位置付けた。(1)スタンド・オフ防衛能力(国産ミサイルの開発・量産、トマホーク等の外国製ミサイルの取得等)(2)統合防空ミサイル防衛能力(イージス・システム搭載艦、迎撃ミサイルの整備等)(3)無人アセット防衛能力(各種無人機の取得、調査、研究等)(4)領域横断作戦能力(宇宙・サイバー・電磁波の能力強化、陸海空の統合運用等)(5)指揮統制・情報関連機能(防衛省/自衛隊システムのサイバー強化、情報分析・対処強化等)(6)機動展開能力・国民保護(輸送力強化、空港・港湾施設等の利用拡大、住民避難への活用等)(7)持続性・強靱性(弾薬・誘導弾・燃料の保有、装備品の可動率向上、施設の老朽化対策等)また、装備品の生産・技術基盤をいわば防衛力そのものと位置づけ、持続可能な防衛産業の構築、リスク対処、販路拡大等に取り組んでいくとしている。具体的には、防衛産業が適正な利益を確保するための新たな利益率算定方式の導入、下請け企業を含むサプライチェーン全体のサイバー等の基盤強化、他に手段がない場合に国が製造設備等を保有する形態の検討などが挙げられた。加えて、防衛装備移転円滑化のため、防衛装備移転三原則等の制度の見直しの検討、基金を創設し、必要に応じた企業支援を行うこととしている。整備計画では、令和5年度から令和9年度までの5年間における防衛力整備の水準に係る金額を43兆円程度、新たに必要となる事業に係る契約額(物件費のみ)を43.5兆円程度とした。(図表2:整備計画の概要、図表3:整備計画の内訳)その上で、計画期間の下で実施される各年度の予算の編成に伴う防衛関係費を40.5兆円程度(令和9年度は、8.9兆円程度)とし、その前提として以下の措置をとることとしている。・自衛隊施設等の整備の更なる加速化を事業の進捗状況等を踏まえつつ機動的・弾力的に行うこと(1.6兆円程度)。・一般会計の決算剰余金が想定よりも増加した場合に
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