32 ファイナンス 2023 Apr.(9)政府・与党における議論これに対し、防衛大臣からは、「将来にわたり我が国を守り抜くため、防衛力を抜本的に強化することと防衛力整備計画の総額をどの程度確保できるかが極めて重要であることについて、国民に分かりやすく丁寧な説明ができるような防衛力整備計画としたい。今後、防衛力の抜本的強化に必要な予算の確保に向けて、財務省と調整を加速していきたい」旨応答した。このような大臣レベルでの協議を経て、令和4年11月28日、総理大臣が財務大臣と防衛大臣を官邸に呼び、以下の指示がなされた。1.現下の安全保障環境を踏まえ、防衛力を抜本的に強化する。中核となる防衛費については、5年内に緊急的にその強化を進める必要がある。そのための予算は、財源がないからできないということではなく、様々な工夫をしたうえで、必要な内容を迅速に、しっかり確保する。2.令和9年度において、防衛費とそれを補完する取組をあわせ、現在のGDPの2%に達するよう、予算措置を講ずる。3.他方、抜本的に強化された防衛力は、令和9年度以降も将来にわたり、維持・強化していく必要がある。国家の責任として、まずは歳出改革に最大限努力するとしても、これを安定的に支えるためのしっかりした財源措置は不可欠。4.このため、年末に、(1)緊急的に整備すべき5年間の中期防衛力整備計画の規模(2)将来にわたり、強化された防衛力を安定的に維持するための、9年度に向けての歳出・歳入両面での財源確保の措置を、一体的に決定する。こうした原則の下で、与党との協議を進めて、政治決着する。重ねて、同年12月5日には、総理から、財務大臣と防衛大臣に対し、以下の指示が下った。1.調整中の次期5年間の中期防の規模については、抜本的強化を進めるための必要な内容をしっかり確保するため、与党とも協議しつつ積み上げで約43兆円とすること。2.令和9年度以降、防衛力を安定的に維持するための財源、及び、5~9年度の中期防を賄う財源の確保について、歳出改革、剰余金や税外収入の活用、税制措置など、歳出・歳入両面の具体的措置について、年末に一体的に決定すべく、調整を進めること。「三文書」の策定に向けた政府内での具体的な議論は、令和3年末から合計18回にわたり開催された国家安全保障会議四大臣会合が中心であるが、これに加え、これまで振り返ったとおり、外部有識者との議論、閣僚級協議などを経た上で、総理から指示が出され、政府としての方針の具体化が進められた。与党では、「外交安全保障に関する与党協議会」が令和4年10月から開催され、同協議会の下に設置された実務者による「与党国家安全保障戦略等に関する検討ワーキングチーム」で「三文書」の改定に向けた議論が行われた。そして同年12月8日、与党幹部と総理を始めとする関係閣僚が参加する政府与党政策懇談会が開催された。懇談会では、「与党国家安全保障戦略等に関する検討ワーキングチーム」の協議状況等について議論が行われた上で、総理から、次のように述べている。我が国を取り巻く安全保障環境が急速に厳しさを増す中、我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜くため、抑止力と対処力を強化することは最優先の使命です。中核となる防衛費については、5年以内に緊急的にその強化を進める必要があります。このため、この防衛力整備計画の規模については、防衛力の抜本的強化に必要な内容を積み上げ、43兆円程度といたします。その結果、令和9年度には防衛費とそれを補完する取組を合わせ、現在の国内総生産(GDP)の2パーセントに達するよう予算措置を講じます。抜本的に強化された防衛力は、令和9年度以降も将来にわたり維持強化していく必要があり、国家の責任としてこれを安定的に支えるためのしっ
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