*1) SACO関係経費とは、沖縄に関する特別行動委員会(SACO:Special Action Committee on Okinawa)最終報告(平成8年12月2日)に盛り*2) 米軍再編関係経費とは、「在日米軍の兵力構成見直し等に関する政府の取組について」(平成18年5月30日閣議決定)及び「平成22年5月28日に日米安全保障協議委員会において承認された事項に関する当面の政府の取組について」(平成22年5月28日閣議決定)に基づく再編関連措置のうち、地元の負担軽減に資する措置を実施するために必要な経費を指す。込まれた措置を実施するために必要な経費を指す。 30 ファイナンス 2023 Apr.ウクライナ侵略「三文書」改定の議論と同時並行で進められた令和4年度予算編成では、中期防対象経費として5.2兆円(SACO*1・米軍再編関係経費*2を含めた防衛関係予算は5.4兆円)を確保し、令和3年度補正予算(7,738億円)と合わせて、従来領域における防衛態勢・装備品の整備のほか、ミサイル防衛、南西地域の防衛力強化等に必要な予算を計上した。令和4年2月24日、ロシアによるウクライナ侵略が開始され、ウクライナの近隣諸国を中心に軍事力強化の流れが強まる中、国内外で安全保障の専門家を中心に軍事動向のみならず、防衛費や戦費に関する様々な分析や評価もなされた。その中で注目を集めたものの一つが、ロシアがウクライナ侵略に向けて軍事面だけではなく、財政・金融面で着々と準備を進めていたのではないか、との分析である。すなわち、ロシアは平成26年のクリミア危機以降、外貨準備を増加させつつ、ドルへの依存を低減し、新型コロナの流行前までは政府債務残高(対GDP比)が減少傾向であることが確認されている。令和4年4月26日、ロシアによるウクライナ侵略などの影響もあり、世界的に原油価格や物価の高騰が進む中、日本国内では原油価格・物価高騰等総合緊急対策が決定された。その際、総理は、記者会見において、「国民の命や暮らしを守るために何が必要なのか、これをしっかり具体的に現実的に議論をし、そして、それをしっかり積み上げていく。その結果、必要とされるものの裏づけとして予算をしっかり用意しなければならない。こうした物の考え方の順番で予算のしっかりとした確保を考えていきたい」旨言及し、数字ありきではなく、必要な事業を積み上げ、その裏付けとなる予算を確保することが改めて強調された。おいて、「岸田総理は、日本の防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する決意を表明し、バイデン大統領は、これを強く支持した。」との記載が盛り込まれた。日米首脳共同声明において、日本の防衛費の増額について言及されることは極めて稀である。当時開会中であった国会においても、この声明を受けて、防衛費の増額ありきではないか、財源はどうするのか、といった観点から、様々な議論がなされた。こうした中で、総理からは、「(防衛力強化の)内容と、規模と、そして財源と3点セットでこれからしっかりと議論を行っていく」ことが明言された。国会では、財務省に対しても防衛費や財源の在り方について問われ、鈴木財務大臣からは、「昨今のウクライナ情勢について、これを対岸の火事としてではなく、我がこととして考えれば、軍事的緊張は、経済・金融・財政に甚大な影響を与え得るものであり、国家の資金や物資の調達能力の脆弱性は、安全保障上のリスクに直結する問題」と述べた上で、財政制度等審議会の議論を紹介し、防衛力を強化することと、有事に十分に耐えられる経済・金融・財政を構築すべく、マクロ経済を運営することを両立させ、持続的に進めることが重要である旨説明された。令和4年6月7日に閣議決定した「骨太方針2022」においては「国家安全保障の最終的な担保となる防衛力を5年以内に抜本的に強化する」とした上で、「本年末に改定する「国家安全保障戦略」及び「防衛計画の大綱」を踏まえて策定される新たな「中期防衛力整備計画」の初年度に当たる令和5年度予算については、同計画に係る議論を経て結論を得る必要があることから予算編成過程において検討し、必要な措置を講ずる」こととされた。その上で、同日の経済財政諮問会議では、総理から、改めて、「内容、規模、財源の3点セットで議論を行っていく」ことが強調された。(2) 令和4年度予算編成とロシアによる (3)日米首脳共同声明と防衛財源を巡る議論令和4年5月23日には、東京の迎賓館赤坂離宮において、日米首脳会談が開催された。その共同声明に(4)骨太方針2022
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