ファイナンス 2023年3月号 No.688
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財務総合政策研究所 総務研究部 主任研究官 安藤 健太財務総合政策研究所 総務研究部 主任研究官 根岸 辰太朗財務総合政策研究所 総務研究部 研究官 吉元 宇楽[聞き手]安藤 健太 主任研究官2012年4月に東京税関に入関。財務省関税局で関税政策の企画立案を担当した他、東京税関で輸入事後調査、旅具通関、犯則事件調査、情報分析業務を経験しました。2021年7月より財務総研で勤務しています。根岸 辰太朗 主任研究官2014年4月に東京税関に入関。財務省関税局における国際交渉業務や、内閣官房で大規模EPAの締結に携わりました。この他、英国へ留学しデータサイエンスを学びました。2022年7月より財務総研で勤務しています。吉元 宇楽 研究官2021年3月に横浜国立大学で博士号(経済学)を取得後、2021年4月より財務総研で研究を行っています。専門は国際経済学で、大学院では特に為替レートの変動が企業や貿易に及ぼす影響について研究を行ってきました。 84 ファイナンス 2023 Mar.17財務総合政策研究所(以下、「財務総研」)では、2022年春から、輸出入申告データを活用した共同研究を開始しています。共同研究の開始からまもなく1年を迎える今回のPRI Open Campusでは、財務総研から共同研究に参画している職員が、共同研究に従事している客員研究官の方々へのインタビューを行い、輸出入申告データの研究利用実施によって初めて認識された問題、行政データの利活用に関する展望等について、「ファイナンス」の読者の皆様に紹介します。1  輸出入申告データを活用した共同研究貨物を輸出又は輸入する際には、貨物の品目や数量、価格、その他輸出入をする者の名称及び住所、取引の相手方の名称等、貨物やその貿易取引の詳細を税関に申告し、輸出入の許可を受ける必要があります。申告された情報は税関にデータベースとして蓄積され、税関業務において利用されてきました。財務省は、税関に蓄積されたこのデータベースを集計し、貿易統計として公表していますので、貿易統計を使うと一定の期間に輸出入された貨物の金額や数量を、貿易相手国や品目別に調べることが出来ます。他方、日本の輸出入1件1件の情報、つまり誰が、誰と、何を、いくら、いつ輸出入したのかという貿易の詳細な情報については、税関に申告された情報そのものである輸出入申告データを使わなければ分かりません。輸出入申告データはいわば貿易の「個票データ」であり、様々な政策の効果を含めて、高度な分析を行うことができます。一方で、輸出入申告データには、取引品目や単価等といった、企業にとって秘密にしておきたい情報が記載されていますので、税関に申告をした者の秘密を保持するため、その取扱いには十分注意しなければなりません。財務省では秘密保持を確保しつつ、研究分野への有効活用をする取り組みとして「輸出入申告データを活用した共同研究」を開始しました。この枠組みの下では、財務省が、行政に資する研究テーマを公募し、公募を通じて決定された外部研究者を財務総研の任期付非常勤職員(客員研究官)に任用して、国家公務員として行政目的の研究に従事していただくこととしています。国家公務員としての守秘義務が課される下で、研究に利用する輸出入申告データには施設内でのみアクセスを可とする等の厳格な利用ルールが課されています。行政データの活用とは ~輸出入申告データ共同研究者に聞く~

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