ファイナンス 2023年3月号 No.688
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図1 関東地方の3枚のプレートと可能な震源の位置 78 ファイナンス 2023 Mar.(5)国難災害が起こると日本は潰れる(6)熊本地震の教訓いる図1の1から5の箇所で地震が起こるのです。地震が起こるところを震源といいますが、首都圏では5カ所も地震を起こす場所があるのです。そして直下型地震はこの1と3のところで、つまり地表に近いところで起こることが心配されています。活断層調査は阪神・淡路大震災以降、文科省が中心となって全国で進められていますが、東京は富士山の火山灰に広く深く覆われているので、どこに活断層があるのかよく分からないのです。ですから「ここに活断層があるのではないか」という前提のもとで、被害想定を見積もらざるをえないということで現在に至っているのです。では発生したら国が潰れるかもしれないという災害にはどのようなものが考えられるか、というと、それは今申し上げた首都直下地震、それから南海トラフ巨大地震です。南海トラフ巨大地震は世界的に見て、地震が起きて津波が発生したというデータが最も多く残っている地震です。日本書紀に684年に大きな地震が起きたことが書かれて以来、9回起こっています。平均発生間隔が150年であることも分かっています。前回が昭和南海地震で1946年ですから、76年経過しています。平均周期の半分まで来ているのです。でも150年というのは平均であり、100年未満で発生したこともあるので、今要注意であると言われております。この南海トラフ巨大地震は、発生したら西日本が壊滅状態になるのですが、幸い東京、首都圏はそれほど大きな被害は受けないことが分かっております。そして地震だけではなくて、東京の水没が非常に心配されております。ご承知のように、東京は1930年くらいから1980年代まで地盤沈下を続けており、日本で最大の地盤沈下をしたのが江東区です。江東区はこの50年間で5メートル近く沈下しています。江東区にはゼロメートル地帯が広がっていて、「地盤の沈下は日常的には分からなくなっているではないか」と言う方が多いのですが、実は24時間連続でポンプを稼働して水を掻き出しているのです。江東区は都心に近いので、マンションがどんどん建設されています。江東区は荒川下流沿いに位置しておりますが、荒川の堤防はスーパー堤防になっていて、簡単には決壊しないということで住宅地として人気が高いです。でももし停電してポンプが停止すると、翌日には水の中にマンションが建っているという状況になる地域なのです。これと同じ状況にあるのがオランダです。オランダは国土の3分の1がゼロメートル地帯です。オランダは昔風車で水を掻き出していたのですが、今はディーゼルポンプで水を掻き出しています。オランダの国土全体が粘土でできているので、何もしないでおくと水が染み出てくるのです。オランダにはスキポール国際空港がありますが、これは海面下3メートルのところにできており、ポンプで水を掻き出さなかったら、スキポール国際空港は水没してしまいます。オランダ政府は年間約1兆円をかけてディーゼルポンプで国土の浸水を防ぎ続けているのです。東京もゼロメートル地帯が広がっていますので、そこに大きな高潮がやってきたり、或いは荒川が氾濫したりすると、大変な被害が出ます。ですから私どもは警告するのですが、「そんなことは起りません」と話を聞き入れない住民の方が多いです。ですが、荒川も利根川も氾濫を繰り返していることを忘れてはいけません。2016年4月14日に起きた熊本地震では政府はプッシュ型の支援を実施しました。東日本大震災での大きな反省があったからです。被災地からの要請がなくても政府がプッシュ型で支援することとなり、佐賀県鳥栖市に265万食の救援物資が届けられました。ところ

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