ファイナンス 2023年3月号 No.688
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ファイナンス 2023 Mar. 77 令和4年度職員トップセミナー (2)東京は世界一危険なスーパー都市(3)首都直下地震発生の切迫性(4)首都直下地震の震源の候補位置す。「15年に一度巨大災害が発生するということは今も続いている」という考え方が必要です。どういう災害が起きているかというと、ご覧いただいている資料にある通り、津波、地震、高潮、洪水が1,500年間に20回から30回発生しています。火山噴火は3回と少ないのですが、日本は温帯の国なので、山の中腹辺りから上には冬寒くて人が住めず、集落がないためです。火山爆発自体は非常に激しいのですが、そこに集落がないということで、巨大災害は3回にとどまっています。インドネシアやフィリピンでは、標高4千メートル級の火山があって、山頂近くで大きな農業集落があるため、火山爆発が起きると、一度に千人以上が亡くなるということが現在も繰り返されている状況です。私どもが一番心配しているのが東京です。東京は世界で1、2を争う魅力ある都市であることは間違いありません。ですが裏の顔は実は世界一危険な都市でもあるのです。この事実はずっと隠されてきています。ご覧いただいているのはドイツのミュンヘンの再保険会社が提供してくれている世界主要都市の災害リスク指数です。東京がダントツに危険であること(東京710.0、サンフランシスコ167.0、ニューヨーク42.0、ロンドン30.0、パリ25.0など)は保険業界では理解されているのです。ご覧いただいているのは歴史的に首都圏でどういう地震がこれまでに発生してきたかを示す図です。地震の起こり方には2つあります。1つはプレート境界型地震です。日本列島の下にはフィリピン海プレートや太平洋プレートが潜り込んでいます。日本全体はユーラシアプレートとか北米プレートの上に乗っているのですが、これは陸のプレートです。フィリピン海プレートや太平洋プレートは海のプレートなので、少し重いです。ですから海のプレートと陸のプレートがぶつかると、重い方が下に潜ります。東北地方を載せている北米プレートは下面で太平洋プレートとくっ付いていますが、太平洋プレートは毎年日本海溝で10センチぐらい北米プレートの下に潜り込んでいます。これがだいたい4メートル潜り込むと、密着している陸のプレートと海のプレートが剝れてしまい、地震発生につながるのです。東日本大震災が起きた海域では過去400年間で地震津波が平均して37年間に一回発生しています。明治三陸津波は1896年、昭和三陸津波は1933年にそれぞれ発生しています。この間まさに37年です。そしてその途中で今度は陸のプレートの中で直下型地震が発生するのです。何故かというと、プレートの境界で海のプレートが潜り込んでいるため、そのエネルギーが内陸の方にしわ寄せされることで地震が発生するのです。これが直下型地震であり、東京では1855年の安政江戸地震が発生しています。それを挟んで1703年に元禄地震、1923年に関東大震災が発生しています。関東地方では図1のようにフィリピン海プレートをはさむ3層構造になっています。そのため、プレート境界型と直下型2つの種類の地震が交代で発生しています。ですから次は令和の東京における直下型地震が心配です。1855年の安政江戸地震では、当時はほとんど木造密集市街地で人口百万人を超える世界一の都市でした。そのため地震発生により火災が多く発生しました。今から99年前の1923年に関東大震災が発生した際には10万5千人が亡くなりましたが、その90%は焼死でした。住宅が広域延焼火災で焼け落ちてたくさんの方が亡くなったのです。こうした経験が「地震で火災が起きなければ大きな被害にはならない」という教訓につながったのです。ご承知のように9月1日は関東大震災が発生した日ですので、政府は「防災の日」という形で啓発活動を行っておりますが、この時作成される防災のポスターは「地震だ、火を消せ」という標語が毎年使われておりました。地震が起きても、火災さえ起らなければたくさんの人は死なない、と思っていたわけです。でもこれが実はとんでもない間違いだったのです。これについては後ほどご説明します。東京で起こる地震については、北米プレートとフィリピン海プレート、太平洋プレートがバームクーヘンのように上下に組み合わさっており、ご覧いただいて

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