ファイナンス 2023年3月号 No.688
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講師演題 76 ファイナンス 2023 Mar.令和4年11月28日(月)開催(1)わが国の巨大災害1.巨大災害が国難災害に変貌今日の講演内容は次の6つに分かれております。それは「巨大災害が国難災害に変貌」「なぜ被害が未曽有になるのか」「コロナパンデミックも相転移災害」「首都直下地震で発生する「相転移」の例」「では減災の方法はあるのか」「国難災害の減災戦術と戦略」です。今日お話いたします首都直下地震とか南海トラフの巨大地震は、被害が大きくなるということにとどまらずに、我が国が先進国から脱落するような大きな被害を被るということなのです。私たちはこうした経験をしたことないので、「そのようなことは起らない」と考えがちですが、それは「必ず起こるけれど、いつ起こるかわからない」という特徴をもっているためです。そしてなぜそんなに被害が大きくなるのか、しかも今コロナ・パンデミック第8波が大変心配されておりますが、これは今日私がお話しいたします「相転移災害」なのです。「相転移災害」ですから、大変取り組みが難しいということもわかるのです。今日の本題であります「東京で地震が起こったらどうなるのか?」については、相転移が起こることが既に分かっております。しかしそのことを理解できるのはじめに皆さんおはようございます。河田でございます。私が47年間研究してきた成果を、一部ですが皆さんにご紹介できる機会をいただき、とてもうれしく思っております。私からお話しする時間は1時間と大変短いのですが、今何に研究を集中させているかということを中心にお話しさせていただきます。は研究の第一線で努力している人にしか分からないのです。「そんなことは起らない」と思いたい、ということが先行していて、いくら警告してもそういう状態から抜けきれないのです。ご承知のように今年の冬に東京電力は4%の剰余率といいますか、電力の供給力に余裕がない状況に陥るわけですが、こんな時に首都直下地震が起きたら、首都圏全体が1か月以上停電するということをもっと真剣に考えないといけないのです。さしあたりこの冬をどうするか、ということで対策を微に入り細に入り講じていても、地震が起きたらそんなものはたちまち通用しなくなるのです。ではどうやってそれを避けるのか、減災の方法はあるのか、あるのであれば、それを実行していただく、こういうことで本日の講演を進めたいと思います。我が国は過去1,500年くらいの間、大災害が起きた事実が古文書に記録されております。このような国は世界でわが国だけです。犠牲者が千人以上出た可能性がある災害のことを「巨大災害」と定義して、古文書に目を通して調べてみると、これまでに99回巨大災害が発生していることが判明しました。1,500年間に99回ということは、平均して15年に1回巨大災害が発生していることになります。そう考えてみると、平成時代は約30年間続きましたが、阪神・淡路大震災と東日本大震災という大震災が2回発生しました。15年に1回の割合で令和4年度職員 トップセミナー河田 惠昭 氏(関西大学社会安全センター長・特別任命教授 阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター長)首都直下地震など 国難災害から我が国を守る

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