ファイナンス 2023年3月号 No.688
68/106

3 世界銀行「世界経済見通し(GEP)」*3) 詳細はhttps://www.worldbank.org/ja/about/what-we-do参照。*4) レポートはhttps://openknowledge.worldbank.org/bitstream/handle/10986/38019/Global-Recession.pdf参照。*5) レポートはhttps://www.worldbank.org/en/research/publication/commodity-markets参照*6) レポートはhttps://www.worldbank.org/en/research/publication/global-productivity参照*7) 本稿では、特記なき場合、「先進国」はGEPのadvanced economiesを、「新興国・途上国」はemerging market and developing economies(EMDEs:新興市場国・発展途上国)を指す。ゼンテーションまで包括的にカバーするプレゼンテーション研修などといった発信スキル向上に向けたプログラムや、Bloomberg terminalやマクロ経済データベースであるHaver Analyticsなどデータ・システム系のプログラムなど、様々な実践的な研修が用意されています。 64 ファイナンス 2023 Mar.コラム〈世界銀行での研修プログラム〉世界銀行では、様々な語学のレッスンからCV(履歴書)の書き方やジョブインタビューの練習まで様々な研修プログラムが用意されています。こうした全職員向けの研修プログラムに加え、私が所属する開発見通し局では、部門の特性に応じ、一般の読者向けに簡潔で分かりやすい英文を書くことに特化したライティング研修や、パワーポイントの作成から模擬プレの特徴 2 世界銀行開発見通し局の業務内容世界銀行の業務は、(1)低利・無利子融資や贈与(グラント)を通じた教育、保健、行政、インフラ、金融・民間セクター開発など開発プロジェクトの実施支援、及び(2)政策面での助言、研究、分析ならびに技術支援など、いわば国際公共財としての革新的知識の共有、という二大基幹業務に大別されますが*3、私が所属する開発見通し局は主に後者の機能を担っています。開発見通し局では、二大定期刊行物であるGEP及び「一次産品市場の見通し」(Commodity Markets Outlook(CMO)。毎年4月、10月に発表。)の他にも、債務や投資、生産性、インフォーマルセクターなど様々なトピックについて分析を行い、報告書や文献を発表しています。例えば、世界経済が本年リセッション(景気後退)に直面する可能性を指摘した報告書(2022年9月)*4など、マクロ経済情勢に係る様々なホットトピックに関する報告書や文献、また「ピンクシート」と呼ばれる主要一次産品46品目の価格動向や、財政余力、インフレーションなどについてのデータベースなどを発表しており、世界銀行の主要な役割であるナレッジ分野での国際公共財の提供の重要な一翼を担っています。こうしたリサーチ・分析分野での日本政府とのコラボレーションも盛んに行われており、昨年5月に発表された、主要な一次産品全てを網羅した初の包括的な分析である報告書「一次産品市場:変化、課題、政策(仮題)」(Commodity Markets:Evolution, Challenges, and Policies)*5や、2020年に発表され、とりわけ新興国・途上国の所得向上と貧困削減の重要な基盤となってきた生産性の伸びの減速とパンデミックによる更なる打撃を世に問うた報告書「世界の生産性:推移、促進要因、政策」(Global Productivity:Trends, Drivers, and Policies)*6などは、日本政府とのコラボレーションによるプロジェクトの好例です。また、レポートや出版物の作成・発表の他にも、シニアマネジメントや他部門からのプレゼン資料や発言要領などの作業依頼も頻繁にあり、それらに往々にしてタイトなスケジュールで対応することになる点は、霞が関での業務と相通じるところがあります。この他、G20等の国際会議への貢献や民間主催セミナーなどでの対外的な発信にも力を入れており、日本の皆様には、世界銀行東京事務所が開催する様々なセミナーやイベントを通じ当部門の業務に触れていただく機会が多いのではないかと思います。GEPは、世界経済の直近の動向、見通し、リスク、政策課題・提言をまとめた第1章、東アジアやサブサハラ・アフリカなど地域毎のより詳細なマクロ経済動向・見通しについての第2章に加え、その折々のホットトピックを扱う章から構成されています。国際開発金融機関のマクロ経済レポートらしく、新興国・途上国*7、とりわけ低所得国(low-income

元のページ  ../index.html#68

このブックを見る