ファイナンス 2023年3月号 No.688
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+①②+ *41) 会計検査院は「事業譲渡等に伴い破綻金融機関に残される債権の債権者と救済金融機関に引き継がれる債権の債権者との間の均衡を図るため、事業譲渡等を行わなかったと仮定した場合の弁済率(負債に対する資産の割合)を維持するのに必要な額を破綻金融機関に対して贈与するもの」としています。詳細は下記を参照してください。https://report.jbaudit.go.jp/org/h24/2012-h24-1037-0.htm *42) ここでの記述は主に遠藤等(2013)に基づいています。*43) 預金保険機構の損失、すなわち、一般勘定における責任準備金が減少して、保険料を納める預取金融機関の負担が増える、結果として実質的には預金4.4 出口に向けた流れファイナンス 2023 Mar. 59図表8  事業譲渡等に伴う救済金融機関及び破綻金融機関に対する(出所)会計検査院*44金融機関の破綻処理制度及び預金保険入門 金銭の贈与【事業譲渡等前】破綻金融機関適資産不適資産付保預金非付保預金その他の負債事業譲渡等を行わなかったと仮定した場合の弁済率(負債に対する資産の割合)を維持するのに必要な額を贈与【事業譲渡等後】救済金融機関適資産付保預金金銭の贈与破綻金融機関不適資産非付保預金金銭の贈与その他の負債*40) 会計検査院は、「破綻金融機関から救済金融機関への事業譲渡等を援助するため、当該事業譲渡等の対象となる資産の額が負債の額を下回る場合に、その差額に相当する額を救済金融機関に対して贈与するもの」としています。詳細は下記を参照してください。https://report.jbaudit.go.jp/org/h24/2012-h24-1037-0.htm者の負担が増える点に注意してください。*44) https://report.jbaudit.go.jp/org/h24/2012-h24-1037-0.htm*45) 日本経済新聞(2011/1/13)「振興銀の受け皿、月内にも公募、借り手保護焦点に、資産査定難航で曲折も」を参照。*46) この数字は下記を参照しています。 *47) 遠藤等(2013)では、「振興銀行がいわゆる商工ローン等ノンバンクから買い取った貸付債権には、譲渡元において利息制限法超過利息を収受していたため、元本を上回る回収分を不当利得として返還しなければならないリスク(以下「過払金リスク」という)や貸付債権の二重譲渡により優先する譲受人に回収分を不当利得として返還しなければならないリスクが付着している可能性があるなど、資産・負債の実情を正確に把握するには時間を要する特殊事情が存していた。これらの特徴・問題点が後述する資産査定、概算払の大きな障害となった」(p.111-112)としています。https://report.jbaudit.go.jp/org/h24/2012-h24-1037-0.htm預金保険機構による資金援助(金銭の贈与)と承継資産の関係は図表8のとおりです。まず、図表8の左のように日本振興銀行の資産は、ブリッジバンクに承継される「適資産」と承継されない「不適資産」で構成されます。承継される資産は図表の右上のように、ブリッジバンクに移管されるとともに、保険が付された預金(付保預金)も承継されます。先ほど、預金保険機構からブリッジバンクに対して金銭の贈与を行う点を指摘しましたが、この図にあるとおり、適資産と付保預金の差額を埋めるよう、預金保険機構による金銭贈与(1,041億円)がなされます*40。一方、図表8の右下のように、預金保険機構は、破綻金融機関である日本振興銀行に対しても、仮に事業譲渡を行わなかった際に実現される弁済率を保証するため*41、一定の金銭贈与(656億円)をしています(さらに、預金保険機構は、保険が付された預金の支払いのために、日本振興銀行に3,719億円の貸出を行っています)。日本振興銀行が有する不良債権は、整理回収機構が529億円で買い取っています(この資金は預金保険機構が貸し付けています)*42。整理回収機構による買い取りは、契約数が多数に及んだこと等から、全4回にわたり実施されています。整理回収機構が買い取る際の評価方法は前述のとおり、引当金控除方式です。また、整理回収機構が回収できないと判断したような債権は、入札を行って外部に売却しています(遠藤等(2013)によれば、額面約62億円の債権が本件入札による売却手続により換価・処分されたとしています)。前述のとおり、整理回収機構は預金保険機構が全額出資していますから、購入価格が高すぎたり、回収できないなどで損失を計上した場合は、預金保険機構の負担*43になりえる点に注意してください。*44このように良い資産と悪い資産の切り分けを行うのですが、いうまでもなくその作業は簡単ではありません。第二承継銀行に譲渡される(日本振興銀行が有する)貸出債権は原則として優良資産(正常先と要注意先)のみとされており、それ以外は整理回収機構に売却されることになりました*45。2010年9月の破綻以降、承継される資産の選定が進み、第二日本承継銀行は2011年4月25日に業務を開始しています。もっとも、第二承継銀行へ資産を移管後、大幅に資産が悪化したという判断から、127億円の貸倒引当金*46を計上しています*47。最終的に、預金保険機構は、第二承継銀行を、イオン銀行に19億8,000万円で譲渡します。預金保険機構は、貸倒引当金が増加したために第二日本承継銀行が債務超過に陥る可能性があったことから、第二日本承継銀行に対して、総額88億円を出資

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